第55話 新規依頼と夜の街


朝、目が覚めると目の前にメールアイコンが出ていた。

うん、これはもしかして・・・依頼か。


まだ眠い目を擦りながらも、アイコンに開けと念じる。


*******


件名:能力回収依頼


本文:

お忙しいところ大変申し訳ありません。

暴走した能力者を止めて頂きたく思います。

件名にもあります通り、能力回収が主な依頼になります。


能力回収カードは黄色となっております。


今回は協力者は居ませんが、同じ能力者の協力を頂いても構いません。


対象能力者の情報です。


・C市の歓楽街付近に出没

・20代男性

・能力・・・対象を操れる類の能力(詳細不明)


最後に依頼達成後には報酬として、山本洋一様の能力強化を行います。

尚、最近の能力回収の協力者報酬の付与が遅れており申し訳ありません。

今回の達成後に合わせて能力強化を行いたいと思います。


それでは、宜しくお願い致します。


******



うん、やはり能力回収依頼だったか。

そして、今までは手伝いが主だったけど、どうやら今回は私への依頼だそうだ。


それにしても、対象の情報が簡単過ぎる・・・。

でも、対象を操れる能力って恐いな・・・どんなレベルの物なのだろう。

地味にこれって難易度高い依頼なのでは?


こうなれば、やっぱ誰かに協力して貰いたいけども・・・楽にクリアするにはゴールドさんだよなぁ・・・。

だって鑑定持ちだし。


とりあえず、メール打ってみるか・・・。

そして、メールを打つと即座に返事が返ってきた。


「すまない、ちょっとしばらく無理だ」


うーん、やっぱ警察の方だと色々と忙しいか。

そうなると、後は後藤さんしか無いか・・・あの人は未だに仕事が良く分らないけども・・・こちらもメールで打ってみる。


流石にゴールドさんのように返事は即座に帰ってこなかった。


さて、後は何気に知らなかったのが協力も報酬があったようだ。

地味に色々と参加していたから意外と色々と強化されるのかな?

ゴールドさんみたいに鑑定強化されたら嬉しいけども。


それはともかく、後藤さんが大丈夫だったら日程合わせて能力者狩りか・・・。

まあ、初日は情報収集になりそうだけども。


とりあえず、そんな早朝からの出来事があったものの今日は平日なので仕事に向かうおっさんであった。


「山本係長!おはようございます!」


会社に到着すると、朝から爽やかイケメンな部下である坂田くんが元気に挨拶して来た。


「おはよう」


それにしても、坂田くんは妙にご機嫌だな。

何か良いことでもあったのかな?


「何か坂田君元気だな。何か良いことでもあったのかい?」


「あはは、係長分ります? いやぁー、何か最近凄く体が軽くてですね!朝から元気なんですよ!」


「ほー、体が軽くねぇ・・・何かやってる?」


「うーん、しいて言えば特製ミルクですね」


「えっ、特製? 何か高級牛乳でも飲んでいるのかい?」


「まあ、そんなところですよー」


ふーん、イケメンの考えることは良く分らないが牛乳ねぇ・・・。

ちなみに、おっさんは牛乳が大の苦手だったりする。

牛が出す液体という時点でダメだが、牛乳を飲むとお腹がゴロゴロして下すタイプだ。


そう、学生時代は給食の牛乳は必ず飲まなかった事もあり、いつも「山本の牛乳争奪戦」がクラスで起こっていたのだった。

「我の牛乳を下々の物達が取り合っておる・・・ふふふ」という厨二真っ只中な設定で生きていた時代だった。


まあ、それはどうでも良いとして、牛乳だったら正直あまり興味が無かった。


「まあ、私は牛乳飲めないもんなぁー」


「ええ、係長そうだったんですか」


「ああ、お腹下しちゃうから」


「あらら、確かにそういう人居ますからね。仕方ないですね」


という朝からどうでも良い会話からスタートしたその日の仕事だった。


そして、合いも変わらず黙々と業務をこなして、その日も業務終了時間となった。


「おつかれしたー」


「おつかれさまですー」


次々と部下達や上司なんかが帰っていく。

私も帰ろうかと準備をしているとメールが届いた。


後藤さんからだった。

内容を見ると今度の土曜日だったら夕方からならOKとの事だった。


なので、集合場所等の返信を打った。


私もぼちぼちと帰ろうかと思い片付けを始める。

そういえば、能力者の出没先はC市の歓楽街って事だったな・・・行って見るかな。

ついでにたまには外で飲んで帰るのも悪くないし。


そう考えていると目の前で帰宅準備をしている坂田君が視界に入る。

そうだ!


「坂田くん、どうだいたまには」


と指でクイッとしたポーズで誘ってみた。


「すみません!行きたいところなんですが・・・ちょっと今夜は用事があって・・・」


「あー、そうかぁ・・・だったらしょうがないね」


「すみません、次回こそは是非お願いします」


「ううん、いいよいいよ。また時間のある時に行こうか」


「はい」


フラれたおっさんであった。

そして、一人寂しく歓楽街に向かうおっさん。


一人で街に繰り出すのは久しぶりだったりする。

ネオン街と店の敷地内から声を掛ける黒服の客引き達。

ゲラゲラと笑い既に出来上がっているおっさん集団。

今から出勤中と思われるお姉ちゃん達。

この中々なカオスな空間が意外と好きだったりする。


ふと歩いていると目に入る看板。


『コスプレイベント中』


クワッと思わず目を見開いて見入ってしまった。

だが冷静に考える・・・所詮は飲み屋・・・安っぽいド○キ辺りで売ってある制服やコスの類だろう・・・。


すると、目の前を学生と思わしき制服少女がスーッと中に自然に入っていった。


「なっ!?」


思わず声が出てしまった。


こ・・・これは、まさかリアルJKとか雇っているヤバイ系なお店なんじゃなかろうか。


パッと見では分らないが・・・そういう物かもしれない。

ちなみに店名は何ていうんだろうか。


「ハッスル」と書いてあった。


なんだ・・・何をハッスルするんだ。

しかも、地味に古臭い建物で店の看板もボロい。

怪しさ満点である。


そもそも、何のお店なんだろうか・・・飲み放題30分5000円と書いてあり、やや値段が高い。

これは恐らくお触りOKな類だと過去の経験上思われる・・・。


だが今日は・・・能力者の偵察に来ているんだ・・・だがさっきのは間違いなくリアルJK。

欲望に負けては・・・。






気が付くと店の中で早口の黒服の説明を受けていた。


早口過ぎて何を言っているのか聞き取れないがとりあえず禁止行為はしないでねという事らしい。

やはり、お触りは上半身だけOKとの事。


ふふふ、みなぎって来たっ!!


薄いつい立程度で囲まれた2畳くらいの狭い部屋に案内された。

室内は薄暗く、キラキラとピンクやイエローのライトがぐるぐると回り照らし眩しい。

そして、大音量で音楽が鳴っており五月蝿いが、時折何故かアンアンと声が聞こえる。


そして、席に座る。

黒服が


「ド↑リン~クの方をお決めになっ○×□☆☆☆」


相変わらずの早口で最後の方がよく聞こえないが飲み物を決めろという事らしい。

まあ、とりあえずビールをと頼むと直ぐにビールが来た。


しかも、缶で。


生じゃないのか・・・。


まあ、しょっぱなからズっこけた感じはするが・・・後は嬢に期待だ。

ワクワクしながら待つ。


すると・・・


「おまたせしましたーカナで~す☆よろしくーーー」


顔を上げて見て見ると・・・




幕内上位付近にいそうな力士がパンパンのメイド服を着て立っていた。

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