第60話 変わる日常


業務中に加藤さんの母乳を飲んでから数日。

僕はずっと思い出しては気持ちと体を迸らせていた。


忘れられないあの味、感触。


僕の能力が本物なら・・・。


業務中にも思い出してしまい仕事に身が入らなくなってきた。


「坂田くんどうかしたのかい?」


「あ、山本係長・・・」


僕の上司の山本係長が話しかけてきた。

何気にいつも気遣ってくれて、食事にも連れて行ってくれたりと、この会社に入ってから世話になりっぱなしの上司だったりする。


僕的にはお兄さんって感じで、兄が居たらこんな感じなんだろうかと思ったりする。

凄く好きな上司だったりする。

たまに良く分らない事を言ったり、変なところもあるけども。


「いえ、別に大したことないですよ」


「なんだい?大したことないって事は何かあるって事だろう?」


「あはは、そうですねぇ・・・もしも、魔法とか使えたらどうなるんだろうなって」


「え・・・」


「あはは、こんないい年した大人が何言ってるんですかね」


「いやいや、いいじゃないか!魔法! 使えたら正義のヒーローになりたいな!」


そう言って、山本係長は手を出してファイヤーとか言っている。

相変わらず面白い人だ。


正義か・・・でも、僕の能力は正義とは言えない・・・。


「まあ、なんだ坂田君。人間素直に思った通りに生きるのが一番だよ!色々と考えたり溜め込んだりすると体に悪いよー」


「そうか、そうですよね! 山本係長ありがとうございました。」


「うん?」


そうだな。

溜め込まずに、出来るというならやってみればいい!


とりあえず、帰る準備をして会社の入り口まで行くと・・・加藤さんが居た。


「加藤さん!今帰りですか?」


「ええ、坂田君も?」


「そうです。この前はすみません?」


「この前?」


「書類渡した時ですよ」


「あー、あの時はごめんなさいね。私何かぼーとっとしてたみたいで、育児で疲れているのかしら・・・」



・・・!?

あの時の事は記憶に無い??

っていう事は・・・あの能力が発動しているときは記憶が無くなるのか。


じゃあ、例えば。


「また母乳飲ませてくれませんか?」


「え・・・何をいっ・・・はい。いいですよ。ここでですか?」


「いや、場所は変えよう」


会社の外倉庫に連れ込んだ。

そこで、僕はたっぷりと母乳を飲ませて貰った。


何だろうこの満たされていく感覚。

体が見違えるように軽くなっていく。


それから、僕は毎日のように仕事の終わりに加藤さんの母乳を飲んでいた。


ある日の朝だった。

山本係長がいつものように眠そうな顔で出社してきた。


「山本係長!おはようございます!」


山本係長のおかげですよ。

僕は吹っ切れました。

素直に生きるのがこんなに楽だなんて・・・。


「おはよう」


眠そうながら係長は挨拶を返してくれた。


「何か坂田君元気だな。何か良いことでもあったのかい?」


「あはは、係長分ります? いやぁー、何か最近凄く体が軽くてですね!朝から元気なんですよ!」


「ほー、体が軽くねぇ・・・何かやってる?」


「うーん、しいて言えば特製ミルクですね」


「えっ、特製? 何か高級牛乳でも飲んでいるのかい?」


「まあ、そんなところですよー」


流石に加藤さんの母乳を毎日飲んでますとは言えない。

でも、いい加減他の人の母乳も飲みたくなってきたな・・・。


「まあ、私は牛乳飲めないもんなぁー」


「ええ、係長そうだったんですか」


僕が信頼している係長だったら、一緒にもう方乳貸して一緒に飲んでも良かったのに。


「ああ、お腹下しちゃうから」


「あらら、確かにそういう人居ますからね。仕方ないですね」


これは残念だ。


だが、仕事にもやる気が出て僕はその日も快調に仕事をこなしていった。


そろそろ、新規開拓も視野に入れるか。


業務終了時間なった。

帰る準備をしていると・・・


「坂田くん、どうだいたまには」


と指でクイッとしたポーズで係長が誘ってきた。


「すみません!行きたいところなんですが・・・ちょっと今夜は用事があって・・・」


申し訳ないですが・・・今夜からは新規開拓なんですよ。

もしも、係長も一緒の趣味ならば・・・飲みながら語り明かしたいのだけど。


「あー、そうかぁ・・・だったらしょうがないね」


「すみません、次回こそは是非お願いします」


「ううん、いいよいいよ。また時間のある時に行こうか」


「はい」


そうして、夜の街に繰出した。

しかし、考えてみるとこんな夜の街に母乳の出る女性は居るのか?


普通に考えて中々見つからないだろう・・・そう思っていると。

正面から買い物袋を提げた女性が歩いてきた。


しかも、体の正面には赤ん坊を抱えている。


これは間違いない。


「すみません」


と声を掛ける。


「はい? あれ?・・・坂田くん?」


「えっ?」


顔を良く見て見ると・・・昔、近所に住んでいたお姉さんだった。

僕が小学校1年の頃に6年生のお姉さんだった。


だが、お姉さんは16歳の頃に妊娠し、そのまましばらくして結婚して遠くへ行ったはず。


「坂田君!坂田ゆうくんだよね!覚えてる?近所に住んでいた香織だよー」


「ええ、覚えていますよ。僕もそう思ってついつい声を掛けてしまいました」


嘘だ。

だが、こんな偶然があるのか・・・。

子供の頃、弟のように可愛がってくれた香織お姉さん。


「懐かしいなー、あんな小さかったゆうくんが・・・こんなに大きくなって・・・昔からイケメンになると思っていたけど、やっぱりかっこよくなったね!」


「あはは、お姉さんも昔と変わらず美人のままですね」


「もう!何言ってるの!もうおばさんよ。上の子はもう高校生だし」


「ええっ!?もうそんなになるんですか!ちなみに・・・その子は?」


「ああ、このこはホントに何ていうかまさかの出来ちゃってねー、それで今回は里帰りなの」


「そうだったんですか・・・」


香織お姉さんの母乳・・・飲みたい・・・。


「ねえ、お姉さん・・・お姉さんの母乳飲みたい」


「へっ!?・・・ゆうくん何を言って・・・・・・いいよ」


了承した瞬間に一瞬目がボワっと青く光った。

能力が発動したらしい。


「とりあえず・・・どこに行こうかな。やっぱり一目に付かないところがいいな」


そうして、近くにあったホテルに入った。

途中、赤ん坊の泣き声が五月蝿くてたまらなかったが、じっくりと母乳を堪能できた。


香織お姉さんには、また週末に来るように命令しておいた。

これって時間明けても効果あるんだろうか?


そう思いながら二人目の母乳を手に入れて、どんどんと僕の心は満たされてのめり込んでいった。

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