第29話 次の依頼


人形使いとの戦いから1週間が経った。


今日は土曜日。

仕事は休みだが、朝からまたもや後藤さんと打ち合わせ中だったりする。

次の能力者狩りに関してだ。


「それにしても、眼鏡を奪う能力って・・・何かどーでもいいですね」


「まあ、それでも半端無い量で被害が出ているから無視するわけにもいかないからなー」


「そうですねぇ・・・まあ、軽度って判断されたのか回収カードも黒で能力回収のみですし」


「ま、さっさと終わらせたいところだけども・・・」


「けども? なんですか後藤さん」


「被害者は女性。犯人は・・・被害者の共通点として直前にカメラのシャッター音がしたという事だ」


「ほほぅ、それにしても詳しいですね。その情報どうしたんですか?」


「んー、まあ、別の能力者からの情報提供だ。これも貰ったんだが見て欲しい」


そう言って、後藤さんはいつもデカイバックから丸めた筒状の紙を出して広げた。

地図だった。

幾つか赤で丸がしてある。


「この地図を見ての通り、この赤で丸がしてあるところで被害が出ているそうだ。今で80件」


「80件!?それはまた多いですね」


「ああ、眼鏡屋は大繁盛らしいがな」


そう言って、おどける後藤さん。


「さて、どうしましょうか後藤さん」


「ああ、そこで問題なのが・・・さっきも言った通り女性の眼鏡しか奪われてないんだわ。だからどうやって能力者を捕まえるか・・・俺達で女装でもするかい?」


と笑いながら言う後藤さん。

方やガチムチなおっさん。

フツメンのおっさん。

どっちにしてもおっさん。


女装しても不審者の出来上がりである。

能力者とどっちが先に警察に捕まるかが問題だ。


「まあ、それは冗談として・・・」


「ですよね。」


「今回は女性の協力者を用意しよう!」


「おおっ!後藤さん当てがあるんですか!」


「ふっふっふ・・・それはな」


「それは?」


「妹だ」


後藤さんの妹?

ガチムチ髭ずらおっさんの妹・・・レスリングとかやってそうな気がする。

いや、こういう人に限って妹は小柄で清楚系な可愛い小動物系な妹とかいう事もあったりするが・・・


「ちなみに、妹はJKだ」


「えっ、凄い年離れていますね」


「まあ、離れすぎてて感性とか話題とか合わないがな」


「いや、おっぱい星人の後藤さんと感性とか言われても」


「おっぱいは今関係ないだろう」


「まあ、ちょっと連絡してみるわ、どうせ暇なやつだし」


そして、後藤さんは妹に連絡を入れていた。

何かバイト代!?とかせびられているようだった。

結構、吹っ掛けられているようだったが・・・。


とりあえず、待つことにした。

そして、30分くらいダラダラと後藤さんと喋りながら待っていると。


「おっ、来たみたいだな」


「兄貴―、おまたせー」


振り向くと




どっかで見た事のあるギャルが立っていた。



「んでさー、どうしたの?」


「また、ちょっと協力して欲しくてな」


「はぁ・・・また変なやつ相手にするの?まあ、バイト代出るからいいけど」


とやれやれと大げさなポーズをするギャル。

このギャルは以前、公園で出会ったギャルだ。

っていうかJKだったのか、もっと年齢いってると思ってたが。

それに、流石に変装していたからバレてないよな。


「で、そっちのおじさんは? あれ?どっかで会ったことない?」


感づかれているーーー!?


「キノセイデスヨ。 初めまして妹さん」


「なんで片言? まあ、いいや。 初めまして~この兄貴の妹で後藤さやか(ごとう・さやか)だよーLJKですっ!」


「えるじぇーけー?」


「高校3年生、ラストジェーケーってことだよ」


「ああ、そうですか」


「何―、その微妙な反応―、兄貴このおじさん面白くないー」


「おいおい、さやか。そんな、よういっちゃんをいじめないでくれ」


「へー、よういっちゃんって言うんだ」


とマジマジと見つめられる。

化粧濃いというか、ギャルギャルしぃメイクだけども・・・結構可愛いかもしれない。。。


「今日はあの時の格好とは違うんだね・・・ボソッ」


ギャーー! 完全にバレてるよ!!


「いやいや、何のことですか?」


「何?どうしたんだ? よういっちゃん?」


「まー、そういう事にしとくよー」


「ははは・・・」


冷や汗が垂れる。

まあ、別にバレても問題の無い相手なのだけど。


「それじゃあ! よういっちゃんにさやか。作戦会議だ!」


そう言って、まずは今回の概要を説明する後藤さん・・・




「うわー、何それキモイ。眼鏡フェチって意味分んない。まあ、でも、眼鏡でスーツ来たイケメンのお兄さんとか好きだけどー」


「まあ、さやか。意味分らないのは同意だが、とりあえず。こいつを今回は捕まえないといけない」


「警察じゃないんですけどー」


「それは、毎回言っているだろう。それにバイト代出すんだし我慢しろ!」


「ぷー」


と頬を膨らませるギャル。

何ていうか微笑ましい兄弟の掛け合いだなぁ・・・でも、年齢離れているせいか親子に見え無い事も無いけども。


「ところで、後藤さん」


「なんだい。よういっちゃん」


「妹さんは・・・」


「さやかでいいよー」


「さやかさんは」


「さやかでいいって」


「う~ん、じゃあさやかちゃん」


「まあ、いいかー」


「うん?さやかがどうしたんだ?」


「能力の事って知っているんですか?」


「うん、知っているよー。中々怖いよねー。でも、羨ましいかなー私も能力欲しいしー」


「え、じゃあ、後藤さんの・・・」


「よういっちゃん!!」


と急に顔を近づけてくるガチムチおっさん。

怖い。


「え?何ですか?」


「ちょっとトイレ行こうか」


「えっ、え、別に私は今は・・・」


と後藤さんに無理やりトイレに連れて行かれる。

そして、トイレで急に手を合わせてお願いされる。


「ごめん!よういっちゃん!妹には能力は俺は持ってない事にして!!」


「えー、なんですかそれ」


「だってなぁー、妹に能力は「おっぱい」と「おしり」ですとか言えないだろう」


「えー、後藤さんでも羞恥心とかあったんですか」


「あるよ!!特に身内に対しては!親にエロビとかエロ本とか見つかる感覚だよ!」


「あー、分らなくもないかも」


「そんな訳で、さやかの前では俺は能力を持たないハンターって事にしておいてくれ!」


ハンターって・・・。

再度、手を合わせてお願いされる。

めんどくさいけども了承した。

そして、再び3人で作戦会議を行う。


「さて、では今回だけど、さやかには囮をしてもらう」


「まー、そうなるよねー」


「そこで、さやかにある能力を使ってもらおうと思う」


「えっ!?能力!? 何!?何!?」


「まさか・・・後藤さん・・・」


「よういっちゃんの能力の出番だ!さやかに着て貰って能力強化して犯人を捕まえればいい!」


「おーー、よういっちゃんって凄い能力を持っているんだねー」


と急に尊敬するような眼差しというか、キラキラとした瞳で見つめられる。

あー、何かギャル相手に私のコレクションを着せるのに若干抵抗あるなー。

でも、OLとかのスーツなら、それっぽく似合いそうな気がするが・・・。

OLの制服って事務処理系の能力なんだよなぁ・・・。


と、その前にまずはご理解頂かないといけない。

後藤さんの知り合いとは言え、俺の能力を教えないといけないのか・・・。


「あー、私の能力はですね・・・制服です」


「おー!せいふく!せいふくって何?何か支配するような征服?それとも骨とか直したりする整復?」


微妙に詳しいな。

でも、ぜんぜん違うってか、いきなりせいふく!と言ってそっちが思い浮かぶのも仕方ないか。

それに、もしも「征服」だったら、今頃厨二全開ファンタジーになっていたはずだ。

けど、めんどうながら毎回の事ながら説明する。


「あー、着る制服です。私の持っている制服を着ると能力が付与されて強くなります。はい。」


「よういっちゃん・・・何故目が死んだように話すんだ」


そりゃ、若い女の子に自分の趣味趣向をひけらかすような説明で目が死なない方がおかしいと私は思う。


「えー、もう毎回この下りがめんどうで」


「う~んと、つまり何かしらの制服に何か能力が付いて、それを着ると何か出来るってこと?すごーい!やるじゃん!よういっちゃ~ん!」


あれ?反応悪くない?

やっぱ、ギャルって事で意外と軽い感じで大丈夫な感じ?

ちょっと嬉しいおっさんであった。


「じゃあ、よういっちゃんよ。今回の能力者狩りに適したいい制服を用意して欲しい」


「ええ、了解です。じゃあ、また明日に集合ですね」


「だな」


「じゃあ、よういっちゃ~んまたね~」


ギャル子ことさやかちゃんが手をヒラヒラと振り、後藤さんも手を上げて去っていった。


さて、私も明日に備えて準備をしよう。

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