第40話 出発


「紹介しよう、木下楓(きのした・かえで)さんだ。」


目の前に美女が立っていた。

髪は長く、それを一纏めにシュシュで括ってる。

顔は女優さんかと思うくらい整っており、目は大きいが垂れ目で優しげな印象だ。

体も出るところ出で、引っ込むところは引っ込んでいるナイスバティと言うべき体。

私よりも年上と聞いたがどう見ても若い。


「初めまして、山本さんですね。金子さんから聞いてますよ」


声も凄く綺麗な声だ。

何だこのテレビの向こう側から出てきたような人は・・・。

思わずこっちが緊張してしまう。


「は、初めまして、山本洋一と申します」


「ははは、山本くんそんなに緊張しなくても。見た目は女優みたいだが一般人だよ彼女は」


「もう、ふふふ」


「いやぁー、本当にビックリしたんですよ。こんな美人さんとはお会いする機会も中々無いモノで・・・」


「もう、山本さん。そんなに褒めても何も出ませんよ」


「いやぁ、私より年上と聞いたんですがお若いんですね」


「もう!女性に年の話は厳禁ですよ」


「ああ、これは失礼しました」


確かにこれは失礼だった。

すると、ゴールドさんが耳打ちする。


「彼女はあれで41だからな」


「えっ!?えええぇぇぇぇ!?」


ニコニコとこちらを見ている木下楓さん。

美魔女ってやつか・・・。

凄いな。


「さあ、自己紹介はこれくらいにして・・・問題の能力者だが」


「はい」


「まず最初に山本くんには話してなかったが、既に偵察を兼ねて私は一回対峙している。正直、その時は何名かで撤退するので精一杯だった。

その時に得た情報を総合すると・・・


敵の能力は、まず半径1~2m程度で発動する。

発動するとSかMの感情が増大する。

ある程度は自我も保つが、能力者のそれぞれの命令に従わざる得なくなる。


例えば、Sの能力者がMに相手を変えた場合、Sが命令をすると100%従ってしまう。

Mの能力者がSに相手を変えた場合は、Mのお願いを100%聞いてしまう。」


何かとんでもない能力だな。

物凄く変だけど。

でも、どちらかと言うとSの能力が脅威か?


「あの・・・金子さん・・・」


ここで木下楓さんが何か言いたげだ。

もじもじしてどうしたんだろう。


「ん?どうした?楓」


「ちょっと・・・」


「ああ、そうか。行ってきなさい」


「はい・・・」


ゴールドさんがニヤリとニヒルな笑いで楓さんを見送る。

何だろうこの息が合っている感なやりとり、夫婦みたいだけど苗字違うし恋人同士なのかな?


「楓はトイレのようだ。まあ、続けよう」


「はい」


「それで、ここからさらにやっかいな能力がある」


「やっかい?何でしょうか?」


「Sの能力者は攻撃能力を強化出来るらしい・・・とても人の力とは思えなかった。

 Mの能力者は攻撃をほぼ無効化してしまう・・・。

 まあ、サドらしいマゾらしい能力だな」


「えっ・・・何かそれ普通に凄いですね」


「ああ、実際俺達が対峙した時に、ローソクのような物を振り回し蝋を飛ばしてきた。当たった者は大やけどをしていた。

Mの能力者は、こっちが打った銃弾を吸収した。

そして、私の能力に至っては無効化した。」


「えっ・・・ゴールドさんの能力って」


「ああ、私の最大の能力・・・これまでも何回か見ただろう?能力者が倒れる様を」


「はい、あれって一体・・・」


「あれはな・・・




 『排便、排尿を強制的に促す能力』だ。」




「はい?」


「排便と排尿を促せる」


「・・・あ、ああ~」


「まあ、その能力の効果は今も楓で実証済みだ」


「えっ、あんた今、何やってるんですか!?」


「まあ、彼女とはそういう関係だ」


と楓さんが向かったトイレの方を見ている。

見た目感じはナイスミドルのダンディズム溢れるおじ様だが、やっている事は極度の変態だ。

今回の能力者と変態レベルではほぼ変わらない。

いや、むしろこっちが酷くないか?


っていうか、このおっさん・・・スカトロ愛好者だったのかぁ・・・。


なんだよ!折角かっこいいおじ様で警察権力もある味方が現われたかと思ったら・・・また一人変態が増えただけだった。

もういやだよ!この能力者達!!


いや、私もその仲間なんだけどさ。


「まあ、それはいい。 Mの能力者は私の能力も効かない。

 Sの能力者には効いたがな。

 それで、何とかその隙に撤退出来たわけだ。」


「な、なるほど・・・」


「それで、今回の切り札となるキミの能力だ」


「お待たせしました」


そこで、楓さんも戻ってくる。

心なしかスッキリした表情だ。

小声で二人が話し出す。



「楓どうだった?」


「ええ、たっぷりでました・・・」


「ちゃんと写真は撮ったか?」


「はい・・・」


「後で見せるように」


「はい・・・」



聞 こ え て い る ん で す が !!



何こいつら、真面目な話の最中にプレイしているんだよ。

もう帰りたい。。。


「さあ、山本くん。制服の能力を聞かせて欲しい」


「ああ・・・はい」


そこで私は一通り説明を行った。

航空会社の客室乗務員の制服。

警察官の制服と。


「ほほぉ・・・これは素晴らしい能力だな・・・これなら」


「山本さんの能力って凄いんですねぇ~」


「じゃあ、早速着替えてみるか」


「ええ」


そして、二人揃って着替えに行った。

その間、私の方も装備を確認。


今回新調した電動ガン。

HK416D

アメリカ軍のデルタフォースが採用したH&K社のカービンタイプのアサルトライフルだ。


これは、バレルの長さを14.5インチから10.4インチに変更可能なアウターバレルチェンジ方式を採用しており、元々サバゲをやっていた時代からアタッカーメインだった私にとってバレルを短く出来るという点が非常に良いし、場合によっては長くも出来るという色々と組み替え、変更可能な点が良いなと思って購入した。


そして、レイル部分にはドットサイトとレーザーサイト、シュアファイアーを装備している。

結構ゴテゴテ感満載な銃になってしまったが・・・。


後はいつも通りの装備で、ハンドガンにハイキャパ、背中にはベネリM3を背負っている。


「よお、お待たせ」


そして、二人が出てきた。


普通に警察官である。

しかも、青色の半袖。

交番に居そうな感じだが、ナイスミドル感のあるゴールドさんは何かコスプレ感が漂ってしまう。

いや、本物の警官なんだけどね。

何かスーツを見慣れているせいか違和感アリアリだ。


「ふぅ・・・何か警官になった頃を思い出すな・・・制服なんて久しぶりだ」


「ああ、やっぱそうなんですね」


「だが、これは凄いな20代の頃に戻ったように力がみなぎってくるな」


「あー、やっぱそういう感覚出ますよね。不思議と」


「ああ、やっぱこの能力はおもしろいな」


そして、もう一人・・・木下楓さん。

うん、こっちは本物のCAである。

どうみても客室乗務員だ。


飛行機の中に居ても違和感無い。

しかも、見事なプロポーションが制服のおかげで際立っている。

うん、これは最高だ!!

素晴らしい!まさにこの服を着る為に生まれてきたかのようだ。


「なんだか照れますねぇ~」


「いやいや、凄くお似合いですよ」


「ああ、これはこれでいいものだな」


「おお!ゴールドさんも思いますか!」


「ああ、これを着たままなんて・・・(ボソッ)


何か恐ろしい事を考えているような声が聞こえたが気のせいだろう。

私の制服に変なことしないでくださいよ!!


そして、楓さんがくるりと自分を見渡しながら回る。


うん、美しい・・・。


これは今回の能力者であるマゾの気持ちが分りそうだ。

あの格好でヒールで踏まれたい。

下から眺めたい。


やっぱ、あのタイトスカートがいいね。

お尻のラインとかが綺麗に出て・・・ってあれ?


何か妙にお尻のところ不自然に膨らんでね?


何だろうあれは・・・・・・はっ!?まさか・・・


オ ム ツ ではないかあれは?


やっぱり、この人達・・・違う意味で恐い・・・。

そして、折角の制服とド美人が台無しだ。

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