第47話 ある能力者3


あれは中学2年の頃だった。


クラスメイトの男達の話で上がったある話。


「なあ、岩木洋子(いわき・ようこ)って腋毛生えてるだってな」


「マジ?」


「ああ、何かチラっとだけど見えたぞ」


「えぇぇぇー、女なのに気持ちわるっ!」


「ちゃんとケアしないと(笑)」


「じゃあ、お前は?」


「しねぇよ(笑)」


その会話を聞いてから、俺は岩木洋子が気になって仕方なかった。


岩木洋子・・・顔は普通。背も普通・・・普通としか言いようが無い。

モブっぽい女だ。


だが、その話を聞いてからか、ついつい目は脇付近を追ってしまう。


特に夏のセーラー服は袖口が広いから腕を上げるたびに凝視してしまう。

それでも、中々見れない。


だが、ある時チャンスが来た。


俺と岩木洋子が日直になった日だった。

最後の授業は数学で黒板いっぱいに書き込みがあり、それを二人で消すことになった。


岩木洋子は一生懸命腕と手を伸ばして消そうとしている。


俺はその黒板の半面を消していたが・・・ふと横を見てみると・・・


袖口がまくりあがり、あと少しで脇が見えそうになっている。


これはあとちょっと!と凝視していると・・・ついに脇が見えた。


そこには、男ほどでは無い量で生えた黒い毛が見えた。

そう、女の脇に密林が出来ていたのだ。


その瞬間、俺は下半身が急激に熱くなった。


そして、それでも凝視していたせいか岩木洋子にバレた。


「ねぇ、何見てるの?」


「い、いや、外の様子が気になって」


「はぁ?」


思わず適当に誤魔化したが何とかなった。


そして、しばらく経ったある時、また岩木洋子と同じ日直になった。

また黒板を消すときに脇を見てみたら、あれだけ生えていた毛が無くなっていた。


俺は何か虚無感のようなもの感じた。


更に時が経ち、また日直が同じになった際に脇を見た。

すると・・・


ゴマのような点やちょっとだけ伸びた毛が見た。


以前のように俺の下半身は急激に熱くなった。

それで私は気が付いた。


この不完全な状態がいいのだと。

「女性なのに」という状態が。


それから俺はネットなどを駆使して、その手の画像ばかり収集した。

特に夏の甲子園の応援は良い。

剃り残しや生えかけが見える。


だが、元から腋毛が生えているのが当たり前な文化や国はダメだったりする。

それだと興奮しない。


腋毛は手入れをする文化があるにも関わらずというのがいい。

そう希少価値や、その女性そのものの人間らしさが垣間見えるのが良い。


だがいかんせん、世の中にはこのフェチはメジャーでは無い。

画像も少ない。

本物も少ない。


だから、俺はこの世の中に納得がいっていなかった。


だが、そんなある日・・・俺の元に神が光臨した。


******


件名:おめでとう


本文:キミに能力を与えよう。

キミは・・・腋毛フェチ?何だこれは?

良く分らないが・・・。

その気持ちが本物なのを見込んで以下の能力を与えよう。


キミが念じれば腋毛を生やす事が出来る。


さあ、これでキミの欲望を満たすといい。


ああ、先に行っておくけど副作用とか一切無いからね。

じゃあ、このメールは自動的に破棄させて貰うよ。


******


冗談だろうと思った。

だが、これが本当ならば素晴らしい能力だ。


腋毛フェチの神様が与えてくれた力だろう。

うん、自分でも何を言っているのか分らないが・・・。


とりあえず、この能力が本物か試してみることにした。


脇が見える場所。




海へ



海に着いた。

夏という事もあり客は多い。


俺も海水浴を楽しむ客の振りをして海に入る。


どいつもこいつも脇の手入れがしっかりとしている。

時折、剃り跡の残る子がいる。

これは素晴らしい。

元の毛根が逞しいのだろう。

写真に撮りたいくらいだが、近年の海でカメラを一人で構えているとあっという間に職質されてしまう。


だから、ここは脳内のカメラで撮影し、脳内のHDDに保存するしかない。


さて、海の浅瀬でビーチボールを使い遊んでいる女子集団が居た。

ビーチボールという両手を挙げてボールを上げるところは脇が全開になり素晴らしい。


もしも、この時に毛が生えてしまったら・・・考えただけでニヤニヤしてしまう。


さあ、あの神からのメールが本物ならば・・・


念じた。



「あれ?みゆき? ちょ・・・・わき!!わき!!」


「へっ? えっ・・・? きゃあああああ!!」


20代くらいの女性だろうか、慌てて脇を両手で押さえて駆けて行った。


私は呆然と見た。


一瞬でもっさりと生えた腋毛。


腋毛が生えているにも関わらず、にこやかにボールをトスする姿。


そして、友達から指摘され自分の姿に気が付き悲鳴をあげ、脇を抑えて走って消える様。


この一連の出来事が信じられなかったと同時に異常に興奮した。


既に私は海から下半身が出せないくらいである。


神は素晴らしい能力を与えてくれた。


これは、腋毛フェチの革命だ。


この海を・・・いや。


この日本を腋毛女性でいっぱいにしよう。


あははは!! はははははははっ!!!

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