概要
「演義」から漏れた辺境東夷の物語
景初二年、司馬懿が公孫淵を下し、海東四郡は魏王朝の領する所となった。帯方郡の下級役人である張政と梯儁は、思わぬ機会を得て、倭王の使者を連れて京師洛陽に上る。
洛陽から帰った張政たちは、倭王を冊封する勅使としての使命を帯び、邪馬台国へと向かい大海を渡る。
洛陽から帰った張政たちは、倭王を冊封する勅使としての使命を帯び、邪馬台国へと向かい大海を渡る。
おすすめレビュー
新着おすすめレビュー
- ★★★ Excellent!!!魏志倭人伝。二千年前にトリップした錯覚を覚える紀行文。
確かに、歴史ジャンルの作品。いや、歴史ジャンルの典型と言うべきか。
魏志倭人伝には帯方郡から日本に至る工程が記されている。A地点からB地点まで東西南北方向に◯里の記述内容が憶測と混乱を呼び、邪馬台国の北部九州説と近畿説の論争を巻き起こすのだが、本作品は、その工程を旅したかのような気分に浸れる紀行文だ。
あの時代の者は、こんな暮らしをしていたのか。こんな考え方で行動していたのか、と臨場感を持って古代日本を追体験できる。
歴史博物館の館内を巡っている雰囲気。
単純な紀行文ではなく、古代日本では脇役に過ぎない張政を主人公に据え、彼の目を通して観察した人間ドラマをも織り込んでいる。
知的好奇心を満た…続きを読む - ★★★ Excellent!!!物語として再構築された『魏志倭人傳』
北狄専門で東夷は興味薄でしたが、
この度初めて『三國志』魏志倭人傳に
朱を入れて読むこととなりました。
それというのも、本作の確固とした世界は
必ずや裏打ちする史料によっているはず、
と興味を惹かれたことによります。
無論、知識として難升米、都市牛利、梯儁、
張政の存在を知ってはいましたが、脳裏に
彼らを描けるほどには読み込んでいません。
そんな曖昧な存在だった彼らを生き生きと
描き出す本作の描写は、よほどに史料を
読み込むか、訓練された想像力か、その
いずれかによらねば難しいと思います。
冗長さを排した文章は抑制が効いて簡潔、
表現からは冗長と無駄が省かれ、しかし、
読む者が脳裏に…続きを読む