海を越える
弁韓は五月頃から、梅雨の時期に入る。このじめじめとして執拗に雨が降り続く季節を六月に抜けると、
この長い待ち時間を、倭人の水夫たちは苦にする様子を見せなかった。倭人たちは自身の生業を投げ棄ってまでこの仕事に従ってくれている。彼らには無論
倭人たちの舟は比較的小型の舟ばかりである。それは倭地に産する堅い木材を使った独木舟に舷側板を取り付けた程度の簡単な構造だが、頑丈でよく風波に耐え、小回りが利く。これを十五艘ばかり集めて、五艘ずつ三団に分かれて行く事にした。天子から姫氏王への賜物は、例えば十張の
始めは朦朧としていた対馬の島影が次第に明確になって来ると、水夫たちは安堵の色を見せる。儀仗用の銅矛をきらきらと耀かせながら、対馬からの舟が迎えに出る。銅矛を掲げる意味は、外からの人が悪い
対馬島は他の陸地からは離れて海中に在る。対馬に近付くと、張政は親指を立ててその島の長さを目測しておいた。矛の穂の様な形の島であるから、後は幅が分かれば面積の見当が付く。面積はおよそ方四百里――一辺が四百里の正方形に相当する広さ――程度と計算した。地形は険しくて平地が少なく、道路といっても
好天が続く内にと、先を急ぐ。また南へ海を渡り、およそ千里余りして
一支国からは東南へ
張政たちの舟は、東南を指す船団からは西南へ離れて、
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