概要
海辺の小藩に仕える武士の娘・美緒は、命令によって、同家の江戸屋敷へとやってきた。そこで与えられた役目は、『頭が狂った』のだという、椿と名乗る男の世話。
椿は咲いた姿のまま枝から落ちる花。
その様はあたかも負け武者の首を落とされるがごとくと、武士に嫌われてきた花。
敢えてその名で呼べという少年に、美緒は心惹かれていき――
・2016年秋開催ビーズログ文庫×カクヨム「恋愛小説コンテスト」において、最終候補作に選んでいただきました。
https://kakuyomu.jp/info/entry/2017/02/03/183326
・おおさわ様からイラストを頂きました。
https://pbs.
おすすめレビュー
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- ★★★ Excellent!!!小気味好い展開。駕籠に揺られる感じでアラヨアラヨと読み進めちゃう。
8万字なんですけど、一気読みしちゃいました。目がショボショボする初老の私には珍しい現象です。
水戸黄門とか遠山の金さんみたいに安心して読めるんです。ハッピーエンドを裏切るはずが無いよね、と言う安心感。
こう書くと「マンネリのワンパターン物か?」と勘繰りますよね。例えを変えましょう。映画「高速参勤交代」。あれも、先は全く読めないけど、絶対にハッピーエンドだよな、と思いながら観ませんでしたか?
あれと同じです。テンポ良く、物語が展開して行きます。
考えてみると、時代小説って、読者を裏切らない要素が揃ってますね。ロミオとジュリエットの如き殿と姫。御家騒動。腹心の部下と忍者。幕府に対する防諜。
そん…続きを読む - ★★★ Excellent!!!気丈な武家娘と捕らわれの若様が織り成す騒動と恋の時代絵巻
主人公の美緒は武家の娘。藩屋敷で働いていた彼女はある日江戸屋敷行きを命じられた。果たしてそこで待っていたのは、首が落ちるようだと武士が忌み嫌う「椿」の名を自ら名乗る不可思議な男だった……という感じで始まる時代小説なわけですが。
屋敷に閉じ込められた椿の世話をする美緒は気づくのです。椿が狂人を演じていることに。
気づかれた椿は少しずつ美緒に心を許していきます。
その様が実にキュートなんですよねぇ。男性なのに姫君キャラと言いますか。
そして、そんな人が実に難しいお家の事情の渦中にいることを美緒は知って、覚悟していくわけです。自分がどう生きるかを。ここで感心するのは美緒が女剣士でも軍略家でもな…続きを読む - ★★★ Excellent!!!時代の中に生まれる恋愛描写が秀逸
歴史物は好きなのですが恋愛ものには全く疎く、作者さんを多少知っていることと、いいタイトルだな、と思ったことが読んだ動機でした。
しかし読み始めてみると止まらない。江戸の描写や落ち着きのある文体、惹きつける設定にヒロインの快活なキャラクターなど、様々な要素がそれぞれに良かったです。最初は謎めいていた椿が徐々にどんな相手かわかっていく展開も丁寧で引き込まれました。
そして、それ以上に良かったのがこの時代の一夫多妻、居住地などの制度やそこに起因する嫉妬や差別でした。この手のジャンルではそれらのテーマは定番なのかもしれませんが、作者の緻密で生き生きとした表現のおかげで、それを存分に理解し、共感す…続きを読む - ★★★ Excellent!!!凛として咲く花の如く
恋愛小説コンテストの最終選考結果から作品を見つけ、普段は女性向け恋愛小説も時代小説もあまり読まないのですが、タイトル誘われて開きいつの間にか読み終えてしまいました。
物語は藩屋敷に奉公する武士の娘、美緒が江戸に行けと命ぜられたところから始まります。正室が亡くなったことにより側室から正室に上がった藩主の妻・津也が命じたのは「頭が狂った」として離れの建屋に隔離にされている少年・椿の世話。椿と心通わせるうちに美緒は彼の頭が狂ってはいないことに気づき、やがて津也の息子である武虎と亡き正室の息子である文虎の家督騒動に巻き込まれ……というストーリーです。
普段読まないジャンルの作品を一気に読ま…続きを読む - ★★★ Excellent!!!実を結べ 徒花二つ 落ち椿 頬を染めしは 赤白桃か
時代物とくれば、少々お堅いイメージを与えるかもしれませんが、読み始めてすぐ文章に入っていけるほど軽快な作品です。
ストーリー冒頭、ヒロインが王子様(いや、江戸時代だからお殿様?)と出会う様はまさに恋愛小説の王道と思わせてくれます。
ライバルの登場や恋の思惑だけでなく、彼らを取り巻くお家のしがらみから展開する物語に、最後までわくわくさせられました。
どこまで時代考証をするか、となると、評価の分かれ目になるのかもしれません。
ここが時代小説の難しさとも考えます。
身分違いの所作や立ち振る舞い、このような会話や口調がはたして許されるかどうか。その時代に合っているか。
ただ、恋…続きを読む