気丈な武家娘と捕らわれの若様が織り成す騒動と恋の時代絵巻

主人公の美緒は武家の娘。藩屋敷で働いていた彼女はある日江戸屋敷行きを命じられた。果たしてそこで待っていたのは、首が落ちるようだと武士が忌み嫌う「椿」の名を自ら名乗る不可思議な男だった……という感じで始まる時代小説なわけですが。

屋敷に閉じ込められた椿の世話をする美緒は気づくのです。椿が狂人を演じていることに。
気づかれた椿は少しずつ美緒に心を許していきます。
その様が実にキュートなんですよねぇ。男性なのに姫君キャラと言いますか。

そして、そんな人が実に難しいお家の事情の渦中にいることを美緒は知って、覚悟していくわけです。自分がどう生きるかを。ここで感心するのは美緒が女剣士でも軍略家でもない、ただの女子ってことです。

キャラ設定じゃなく、キャラの心情の動きを見せてくれる展開に、ぐぐっと引き込まれずにはいられませんよ!
芯の太い物語と、姫な若様との恋愛劇。両方味わえる一作です。

(必読!カクヨムで見つけたおすすめ5作品/文=髙橋 剛)

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