椿の花のごとく死ね

作者 秋保千代子

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★★★ Excellent!!!

徳川幕府は江戸と地方に諸国を実質的に分割し参勤交代という制度で幕府に忠誠を尽くすという強固な幕藩体制を作った。
そうした中で国を守ろうと翻弄される藩主を筆頭とする人々。
ある日、藩に奉公という身分で仕える美緒は、江戸屋敷に幽閉される謎の狂人の世話を任される……。
江戸時代の幕藩体制をうまく利用した恋物語。実に見事。
文体が時代調と現代調が入り乱れて少し読みにくかった部分もありますが、サクサクと軽快に一気に読めました。
秀作です。

★★★ Excellent!!!

主人公の美緒は武家の娘。藩屋敷で働いていた彼女はある日江戸屋敷行きを命じられた。果たしてそこで待っていたのは、首が落ちるようだと武士が忌み嫌う「椿」の名を自ら名乗る不可思議な男だった……という感じで始まる時代小説なわけですが。

屋敷に閉じ込められた椿の世話をする美緒は気づくのです。椿が狂人を演じていることに。
気づかれた椿は少しずつ美緒に心を許していきます。
その様が実にキュートなんですよねぇ。男性なのに姫君キャラと言いますか。

そして、そんな人が実に難しいお家の事情の渦中にいることを美緒は知って、覚悟していくわけです。自分がどう生きるかを。ここで感心するのは美緒が女剣士でも軍略家でもない、ただの女子ってことです。

キャラ設定じゃなく、キャラの心情の動きを見せてくれる展開に、ぐぐっと引き込まれずにはいられませんよ!
芯の太い物語と、姫な若様との恋愛劇。両方味わえる一作です。

(必読!カクヨムで見つけたおすすめ5作品/文=髙橋 剛)

★★★ Excellent!!!

綿密に設計された世界観とブレる事無く展開するストーリーに、安心感を持って読み進められます。

この作品をフォローしてから、実際に読むまでのタイムラグをすごく後悔しました。
もっと早くに読むべきだった!

自信を持ってお勧めできます!
まずは第1話を読んでください!「面白い!」がすぐにわかります♪

★★★ Excellent!!!

屋敷に閉じ込められた狂った(ふりをしている)少年の面倒をみる勝ち気な少女。一体何故少年は狂人のふりをしているのか。少女はどうすれば、少年を救えるのか。のっけから引き込まれる設定です。
人間味あふれる悪役の行動にも現実味があり、読み終わるころには、誰もを知っているような気分に。


話が進むにつれて見えてくるのは、一人の男を愛する二人の女性のそれぞれの愛の形。
もっと早く読めばよかった。

★★★ Excellent!!!

歴史物は好きなのですが恋愛ものには全く疎く、作者さんを多少知っていることと、いいタイトルだな、と思ったことが読んだ動機でした。

しかし読み始めてみると止まらない。江戸の描写や落ち着きのある文体、惹きつける設定にヒロインの快活なキャラクターなど、様々な要素がそれぞれに良かったです。最初は謎めいていた椿が徐々にどんな相手かわかっていく展開も丁寧で引き込まれました。

そして、それ以上に良かったのがこの時代の一夫多妻、居住地などの制度やそこに起因する嫉妬や差別でした。この手のジャンルではそれらのテーマは定番なのかもしれませんが、作者の緻密で生き生きとした表現のおかげで、それを存分に理解し、共感することができました。

悪役である武虎は特に好きで、もちろん話の性質上、良い人物としては描かれないのですが、人間らしさを感じる良い配役だなと思いました。物語をぐっと引き締めるこういう悪役は大事ですね。

こういう自分にない感性から生まれる作品に触れられるのは本当に嬉しいです。ありがとうございました!

★★★ Excellent!!!


江戸時代中期を舞台に、藩の跡目争いと恋愛を描いた魅力的な作品です。
明るくて面倒見のよい武士の娘・美緒。
指示を受けて「狂っている」者・椿の世話をするうち、彼の正体と幽閉されている理由を知り、彼に協力することになるのですが……。

人間の欲や策略、そして恋情が丁寧に描かれています。
明るくしっかり者の美緒と、彼女が世話をする椿のやりとりがとても明るくて、テンポのいい会話や描写が楽しいです。
二人の心が次第に通いあっていく様子はあたたかくて、時々くすっと笑ってしまうシーンがたくさんありました。
また、椿と彼の義母・津也や義母弟・武虎との確執は、緊張感と共にどうしようもないやるせなさを感じさせます。
武虎の美緒に対する深い思慕、そして時期藩主の座をめぐる対立と様々な思惑。
目を離すことができない展開が続き、先へ先へと引っ張られるようにして一気に読みました。

各話はそれほど長くなく、文章もとても美しくてなめらか。
読みやすくて本当に楽しかったです。
まだ読んでいないかたには、心からオススメしたい作品です。

★★★ Excellent!!!

 恋愛小説コンテストの最終選考結果から作品を見つけ、普段は女性向け恋愛小説も時代小説もあまり読まないのですが、タイトル誘われて開きいつの間にか読み終えてしまいました。

 物語は藩屋敷に奉公する武士の娘、美緒が江戸に行けと命ぜられたところから始まります。正室が亡くなったことにより側室から正室に上がった藩主の妻・津也が命じたのは「頭が狂った」として離れの建屋に隔離にされている少年・椿の世話。椿と心通わせるうちに美緒は彼の頭が狂ってはいないことに気づき、やがて津也の息子である武虎と亡き正室の息子である文虎の家督騒動に巻き込まれ……というストーリーです。

 普段読まないジャンルの作品を一気に読ませてくれたリーダビリティを支えているのは、登場するキャラクターの生き生きとした描写です。特に最も心惹かれたのは主人公の美緒でした。勝ち気で、芯が通っていて、意外に機転も利く。己にも他人にも正直な彼女の生き様は凛として咲く花の如く彼女に纏わる人々を魅了し、そして読み手をも魅了します。僕のこの手の恋愛小説は「やたらあちこちから好かれるヒロイン」に説得力を持たせることが最大の関門だと思っているのですが、溌剌と魅力的に綴られた美緒というキャラクターがその難関を見事にクリアしていると感じました。

 そして本作において個人的に素晴らしいと感じたのが「悪役」との向き合い方。僕が女性向けの恋愛小説で読んでいてよく引っかかる点は主に二つ。一つが前述の「理由もなくモテまくるヒロイン」。そしてもう一つは「記号化した悪役」です。

 悪役にも道徳心がある以上、それに反する行動を起こすまでには葛藤や焦燥があるはずです。しかし愛憎劇を主舞台とする恋愛小説においてその憎悪の過程が見えず、悪役が「悪いことをする舞台装置」になってしまっているパターンによく遭遇しました。しかしこの作品はそうではなかった。物語も佳境に迫…続きを読む

★★★ Excellent!!!

 連載当初から、ずうっと楽しみで追って来た作品です。
 それだけに、最終話まで読んで胸がいっぱいで、一体何と書いたら良いのかずっと悩んでいました。

 最初はもちろん、美緒や椿たちに幸せになって欲しいとどうにか祈りつつはらはら読んだのはもちろんのこと。
 後半に行くにつれ津也や滋虎たちそれぞれの思いがあらわになっていき、登場人物たち全員がそれぞれの生を不器用ながらにあがき生きていてたまらなく愛おしい。

 流れる恋(5)にて椿がまるで独り言のように語りかけた言葉が、どうしようもなく心に刺さります。


 鮮やかな人間模様を、是非ご堪能あれ。

★★★ Excellent!!!

 舞台が江戸時代、現代とは違うしきたりや確執、愛憎の中で瑞々しく動く登場人物、心の機微。買い物一つとっても不便極まりない。そこにもドラマが感じられます。
 現代と違い、思いを伝えること一つとってももどかしい。
 情景が映像として浮かぶような描写も秀逸。
 

★★★ Excellent!!!

 時代物とくれば、少々お堅いイメージを与えるかもしれませんが、読み始めてすぐ文章に入っていけるほど軽快な作品です。

 ストーリー冒頭、ヒロインが王子様(いや、江戸時代だからお殿様?)と出会う様はまさに恋愛小説の王道と思わせてくれます。

 ライバルの登場や恋の思惑だけでなく、彼らを取り巻くお家のしがらみから展開する物語に、最後までわくわくさせられました。

 どこまで時代考証をするか、となると、評価の分かれ目になるのかもしれません。
 ここが時代小説の難しさとも考えます。
 身分違いの所作や立ち振る舞い、このような会話や口調がはたして許されるかどうか。その時代に合っているか。

 ただ、恋愛を主題に置いたとき、それは取るに足りない部分かと。そもそもが現代に生きる我々が読む作品であるのだから、理解と面白さを優先させるべきでしょう。私は歴史学者でもないのだし。

 思わず、下手くそな一句を書いてしまうほど、江戸に花咲く恋模様、楽しく読ませて頂きました、ありがとうございます。

★★★ Excellent!!!

時代物、というので読むのをちょっと後回しにしていたことを今公開しています

一本芯の通った文章
ほんのり甘い恋愛要素
起承転結のしっかり組み立てられた物語

とりあえずフォローして、もっと早く読み始めなかった2週間くらい前の自分を叱り飛ばしたい

堪能しました

★★★ Excellent!!!

江戸時代中期、徳川幕府治下の武家社会は、
日の本の史上に類を見ぬほど落ち着いている。
そんなころ、江戸に程近い東海道の一藩に
お家騒動の暗雲が立ち込めた。

気狂いを起こした嫡子と、側室上がりの女の息子。
跡目相続は母親同士の対立構図にとどまらず。
ここに来て火の点いた息子同士の争いの種は、
気が強くて少々手の早い下級武士の娘、美緒だった。

国許から江戸に上がった美緒の視点で物語は進む。
椿と名乗る少年の正体に気付き、
椿という名に隠された秘密を知り、
御方様に仕える『網』に近付き、
と、テンポよくライトに紐解かれるストーリーに、
次のページをクリックする手が止まらなかった。

惜しむらくは、8万字というサイズであること。
椿の狂態と文虎の葛藤、その対比をもっと読んでみたかった。
母たちの確執や武虎の愚直さがもっと強く描かれていたなら、
決着に当たっての2人の息子たちの覚悟がより映えたと思う。

生意気を申し上げて御免なさい。
すごく好きな題材だから、もっと欲しいと思った。
美緒と彼らの恋と忠心と家族愛の物語に
もっと長く浸っていたかったのです。

椿の花のごとく死ね。
それは呪いか、はたまた誇りか。
覚悟を決めた武士の生きざまは美しい。
文に生きる世の、刀に恃まぬ武士でさえ、なお。

★★★ Excellent!!!

この一話目をクリックしてよかった。純粋にそう思えた作品です。
一話中盤からぐいぐいと口角が上がり始め、気が付いたらにやけながらどんどんページをスクロールしていました。

無邪気なようでしっかりしていて、でもやっぱり抜けていて、それからとても優しく芯のある椿殿が現在一番気になっているキャラクターです(笑)。

★★★ Excellent!!!

時期外れに咲く花が狂い咲きなら、この椿の咲きようは、いみじくも正しい。

江戸を舞台に描かれるのは、倒錯的なお家騒動。主人公の美緒は、世話を仰せつかった幽閉者・椿の狂態にそぐわない聡明な本性に気づいていく。
寄り添いは思慕へと変わり、やがて二人には恋情と信頼が生まれる。

あくまでひとり咲こうとする椿。宿命に張り巡らされた網。花首が落ちる日を待ちわびる狡猾な蛇。

その間をつなぐのも解くのも美しい緒。強く優しい彼女を応援せずにはいられない。
いつか二人で自由な空を見られる日が来るように。

★★★ Excellent!!!

カクヨムでは比較的珍しいのではないでしょうか?

歴史物の恋愛・ラブコメです。
江戸時代の藩主の屋敷に奉公することになった少女が、わがままな新しい主の世話をするところから話はスタートします。

子供じみた言動の困った主が抱える謎や、少女の心情の変化などが描かれており、とても面白いです。

恋愛物語だがどこかミステリー要素さえ窺える展開。期待をこめて、続きを楽しみにさせて頂きます。

★★★ Excellent!!!

 主人公である美緒は、江戸に行けという命令に従って、江戸へと向かう。そこで会った大久保滋虎の妻、津也に“離れにいる男の世話をしてくれ”と言われるが……。

 中にいる人間が出てこないようにするための鍵――。
 老若男女問わず、三日ももたずに根を上げた――。
 中にいるのは狂人。

 いやぁ、一体どんな男なのかと読み進めてドキドキしました(>_<) 
 しかし描写から読み取れるのは中性的な優男という感じで、ほっと胸を撫で下ろす。
 武士なら厭うだろう花――『椿』の名で呼んでくれという男は、なんとも子供っぽいが、今後美緒との関係はどう発展していくのだろうか。
 
『恋愛ジャンル』である以上、恋へと発展していくのだろうが、その過程がとっても楽しみな一作です。
 
 江戸で繰り広げられる恋愛模様を皆さまも是非っ(⌒∇⌒)