来栖千依

文明や倫理や活動体が大きく異なる島を渡り歩く、謎ばかりの男と少女。 二人は壊れかけの世界のなか、何を求めてどこへ行くのか。 情報処理工学やまだ見ぬ先進医療科学的な描写と、古代から…続きを読む

みんな大好きなスーパーのお惣菜コーナーで繰り広げられる、イケメンつきほっこり一年人間ドラマ。 遅番制度や値引きなど、廃棄品を最小限にしつつ利益を確保するため、売り手側に与えられる…続きを読む

美しく魅力的な女探偵イヴ。 読者が見守るのは、炎を操る彼女の復讐劇…。 この物語は勧善懲悪的ではない。 イヴは強くしなやかで、目的のためなら罪も厭わないからだ。 彼女のダークヒー…続きを読む

山間の因習残る村を舞台にした『本格民俗学ホラー』だと思って読み始めたはずだ。はじめは。 田舎の村はよくこういった物語の舞台に選ばれる。 その理由は、奇妙な事件ーー多くが古くから伝…続きを読む

剣を奪われた騎士見習いの少女メルが飛び込んだのは、未知なるドールドレスの世界。 そこでは何もかもが小さく誂えられ、誰かに『お迎え』されるドールが、いつかのその日を待っている……。…続きを読む

おどろおどろしくて、どこかひょうきんな平安風トリップ恋愛ファンタジー。 OLさんが主人公なこともあって、大人向けの描写が多い本作。 どきどきひやりとする文章に翻弄されながら、特に…続きを読む

時期外れに咲く花が狂い咲きなら、この椿の咲きようは、いみじくも正しい。 江戸を舞台に描かれるのは、倒錯的なお家騒動。主人公の美緒は、世話を仰せつかった幽閉者・椿の狂態にそぐわない…続きを読む

人はどうして空に憧れるのだろう。 一たび地面を離れてしまえば、風を掴んでいるようでも翻弄されている。自由に躍る体はいつでも死に繋がれている。高度風向き気圧揚力までもがぜったいに手…続きを読む

中性的なロディアと美しく気高いリズの小気味良い会話を追っていくうちに、ストーリーはとある『一件』へと辿り着く。 スチームパンク的な世界観とそこで活きる者たちの対比が面白い。 乾い…続きを読む

読者は証明する。叙事詩のように語られる風説は事実だったのだと。 伝説と化した海賊は人魚の躊躇いによって『生きた』。 凪や時化にかき混ぜられ、陸で生まれた荒くれ者たちを飄々と躱しな…続きを読む

舞台が宇宙船、主観が猫、そして王様。珍しくも興味深い舞台で、低い視点から見える世界は、単調で滑稽で、切なくも愛おしい。 猫一匹と侮るなかれ。 猫でなければ出来ないこともある。 気…続きを読む

乙女ゲーム風の外殻に、小学校の図書館に並べてある「まんがでわかる〇〇」に近いわかりやすさ。 気軽に読めて、平安時代という一般人にとってはとっつきにくい分野に詳しくなれる、一石二鳥な…続きを読む

心の交流に焦点をしぼった作品。 キャラクターの成長を追いつつもエピソードを夏で統一しており、ジリジリと肌を焼く陽や閉鎖的な「家」に籠った熱気が漂う。 丁寧な文体で綴られるのは前時…続きを読む

ファンタジー系あやかし調伏物語ときくと、普通は百鬼夜行絵巻に出てくる異形や格好良い陰陽師を想像しがち。だが、本作は｢真譚｣と冠しているだけあって一味違う。 あやかしは技術転移されて…続きを読む

文章を読んでいて、息を殺す経験がどれだけあるだろう。 最初は描かれる光景の美しさに、次は主格である双子の絶妙な口上に、さらに絶望からの救いを求めて、声をのみこみ、息をころし、展開を…続きを読む

最初のページを開いた読者は思うだろう。童話とはなんぞや、と。だが続く文章に目を通したが最後、物語が途切れるまでのめり込むに違いない。 強盗童話は、魔女の媚薬よりも強く読者を物語に引…続きを読む

道行きのために記憶を払う様々な旅客たち。人には忘れたい記憶もあれば、辛くても持ち続けなければならない記憶もある。それを優しく分かりやすく教えてくれる作品。

薔薇は手入れされなければあっという間に朽ちて汚れる。 エレオノーラには忠実な従僕のアンドロイドがいて、彼女だけを世話している。心配ないと思いきや、無情にも老いは降りかかる。 自尊心…続きを読む

蒸気機関都市で切り裂きジャックなどの都市伝説から派生したレヴェナントを軽快なアクションで倒していくお話。 スチームパンク風のゲーム世界を探索しているかのような爽快感と、ヴィクトリア…続きを読む

ノスタルジックな世界観に浸りつつ、義理や人情が強かった時代の光と闇を味わえる作品。 登場人物たちが抱える問題はそれぞれ違っているけれど、流れる時間のように紡がれる優しさが日常を形作…続きを読む

自由奔放な術士・亜緒と生真面目剣士・蘭丸の掛け合いが絶妙でくせになる作品。 ノスタルジックでありながら現代的で、読みやすい文章も相まって、独特の空気感がただよう。ぜひご一読を。 個…続きを読む

歯車水晶という素敵なタイトルの響きにつられて。
導入部の長い台詞は役者さんが頭のなかでさも大仰に演じているように聞こえました。
冒頭でこれだけわくわく出来る作品、追わなきゃ損です！

ヴィクトリア朝を根底に敷いた蒸気機関都市の描写、登場する人物たちのユーモアとスチムロイドなど散りばめられたガジェットの数々。スチームパンク好きにはたまらない、素敵な世界観にひたれる…続きを読む