大人になんかなりたくない。

人はどうして空に憧れるのだろう。

一たび地面を離れてしまえば、風を掴んでいるようでも翻弄されている。自由に躍る体はいつでも死に繋がれている。高度風向き気圧揚力までもがぜったいに手懐けられない。

それでも飛び立つ理由は、本作の二人を見れば明瞭。誰かのため。それ以上でも以下でもない。

物分かりの良い大人なら、危ないことは避けるだろう。
けれど、小さなすれ違いから「大切」を手放してしまったとき、己の安全もかえりみずに飛び立てる彼らのようにありたいと思う。

誰かを純粋に求められなくなるくらいなら、大人になんかならなくていい。

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