正統派冒険ファンタジー、という評価が既にたくさんついているところではありますが、なによりもまず、登場人物がみんなかっこいい。
かっこいいというと少し違うかもしれない。
全ての人物に、それぞれの「ドラマ」が存在する、非常に厚みのある造形になっているのがとにかく素晴らしいです。
そのおかげで、正統派のストーリーが確かな説得力を持って胸に迫り、また物語に重厚な雰囲気と四次元的な広がりが生まれていると思いました。ハイ・ファンタジーかくあるべしだなぁ。
そんな、すごくレベルの高い作品だと思いました。そして、これは続きを読んでみたい。長期の漫画連載で、長い間楽しみたい。
おもしろかった!
広大な樹海を靡かせた風が果てしない空に吸い込まれていく・・・
読み始めてすぐに圧倒的なリアリティを伴った情景に包まれてしまう、不思議な力に満ちたこの作品。
決して形容詞の過剰包装ではなく至ってシンプルな言葉で綴られているにもかかわらず、VRゴーグルでも付けたかのように360度のビジョンが展開されている感覚に陥るのは、細部まで非常に緻密に設計された世界観の賜物ではないかと思います。
航空機の種類、メカニズム、空賊たちの流儀、スカイスポーツのルールやテクニックなど、決して単なる思い付きではなく、奥深い知識と綿密な設定の作りこみが根底にあることが窺い知れます。
圧巻の世界観の只中を個性的なキャラたちのすぐ隣で共に冒険し、ギディとシルウィンの成長を見守ることができるこの作品は、異世界に読者自身が入り込める本物のファンタジーです!
清々しい物語の、その最後の最後に漂う怪しい雰囲気は、さらなる壮大な冒険への旅立ちを予感させ、抑えきれないほどの期待を抱かせてくれます!
まず初めに、ひじょうに好みの物語である。懐かしく、思い出深いファンタジーの世界にどっぷり浸かれる物語だ。
大樹海に覆われた世界、人々の移動手段は飛行船――これだけでワクワクが止まらない読者も多いことだろう。
話の筋は、主人公であるキコリの少年ギディと、いつか自分の飛行船を持つことを夢見るシルウィンの二人が、空賊にさらわれたシルウィンの姉シルフィーを助けるために大空に旅立つ――世界観同様、奇をてらわないストーリーラインで、読者に真っ向から挑んでくるのだが、この作品の見どころは他にもたくさんある。
『大樹海グリーンオーク』、自然の力を操ることができる『エレメンター』、空の競技である『レックスバード』、どこか憎めない空賊の大人たち、どの要素でも長編一つ書けそうな設定やガジェットが盛りだくさんなのだ。
完読して一番最初に思ったのが、良くこれだけの要素を物語の中に加えて、この分量でまとめられたなあということだった。それくらい一つ一つの設定がしっかり作りこまれている。とくに『レックスバード』は素晴らしく、その対決シーンがありありと想像できた。
物語の冒頭、時系列で少し混乱してつまずくかもしれないが、しっかりとこの世界の『西暦』にあたる『エスタ歴』と、時刻に注目して読み進めてほしい。最後まで読んでこの物語が気に入った読者には、長めのエピローグという思わぬご褒美(パンケーキ)が待っていることだろう!
文明が廃退した世界の中で、飛行船に憧れる少女が、空賊に攫われた姉を取り戻すために、幼いころから共にいた大切な少年と共に無謀にも空へ飛び出していくという導入によって始まる本作品。空を舞台にしたファンタジー作品で、ライトノベルというより、年頃の少年少女に向けて作られたジュナイブル小説といった印象を受けた。
内容を語らずに文章について触れると、読みやすさを重視した温かみのある文章といった印象。子供から大人まで楽しめそうなキャラの造形に、壮大そうな作品の世界観が非常によくマッチしている。「大人たちは役立たずだ!」というワードが、少年少女たちのみが持つ独特の強固な意志であることを、作中の描写がよく表現してくれているように思う。
壮大な物語を予感させる導入に、伏線と思われるいくつかの気になるワードも提示されている本作品は、思春期真っ盛りの中高生からとうにその時期を過ぎて成熟した大人たちまで、少年少女時代の気持ちに戻って読むことが出来る作品だと感じている。レビューを書いた現時点で、物語はまだ起承転結の起~承といったところ。今後の展開に注目である。