少年少女の気持ちに立ち返って楽しめる「空」のファンタジー

文明が廃退した世界の中で、飛行船に憧れる少女が、空賊に攫われた姉を取り戻すために、幼いころから共にいた大切な少年と共に無謀にも空へ飛び出していくという導入によって始まる本作品。空を舞台にしたファンタジー作品で、ライトノベルというより、年頃の少年少女に向けて作られたジュナイブル小説といった印象を受けた。
内容を語らずに文章について触れると、読みやすさを重視した温かみのある文章といった印象。子供から大人まで楽しめそうなキャラの造形に、壮大そうな作品の世界観が非常によくマッチしている。「大人たちは役立たずだ!」というワードが、少年少女たちのみが持つ独特の強固な意志であることを、作中の描写がよく表現してくれているように思う。
壮大な物語を予感させる導入に、伏線と思われるいくつかの気になるワードも提示されている本作品は、思春期真っ盛りの中高生からとうにその時期を過ぎて成熟した大人たちまで、少年少女時代の気持ちに戻って読むことが出来る作品だと感じている。レビューを書いた現時点で、物語はまだ起承転結の起~承といったところ。今後の展開に注目である。

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