もう一度、冒険の旅に出よう――ファンタジーと言う名の青い空に

まず初めに、ひじょうに好みの物語である。懐かしく、思い出深いファンタジーの世界にどっぷり浸かれる物語だ。

大樹海に覆われた世界、人々の移動手段は飛行船――これだけでワクワクが止まらない読者も多いことだろう。

話の筋は、主人公であるキコリの少年ギディと、いつか自分の飛行船を持つことを夢見るシルウィンの二人が、空賊にさらわれたシルウィンの姉シルフィーを助けるために大空に旅立つ――世界観同様、奇をてらわないストーリーラインで、読者に真っ向から挑んでくるのだが、この作品の見どころは他にもたくさんある。

『大樹海グリーンオーク』、自然の力を操ることができる『エレメンター』、空の競技である『レックスバード』、どこか憎めない空賊の大人たち、どの要素でも長編一つ書けそうな設定やガジェットが盛りだくさんなのだ。

完読して一番最初に思ったのが、良くこれだけの要素を物語の中に加えて、この分量でまとめられたなあということだった。それくらい一つ一つの設定がしっかり作りこまれている。とくに『レックスバード』は素晴らしく、その対決シーンがありありと想像できた。

物語の冒頭、時系列で少し混乱してつまずくかもしれないが、しっかりとこの世界の『西暦』にあたる『エスタ歴』と、時刻に注目して読み進めてほしい。最後まで読んでこの物語が気に入った読者には、長めのエピローグという思わぬご褒美(パンケーキ)が待っていることだろう!

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