願ってはいけなかった『愛』の物語

文明や倫理や活動体が大きく異なる島を渡り歩く、謎ばかりの男と少女。
二人は壊れかけの世界のなか、何を求めてどこへ行くのか。

情報処理工学やまだ見ぬ先進医療科学的な描写と、古代からの神話や天界階層をイメージさせる設定が融合していて、硬派な大人の男性向けに執筆されたのが女性の私にもよくわかった。

けれど、熾烈をきわめる戦闘を乗り越えた物語の最深部にあったのは、痛いほど純真な愛情だった。

あなたのために。
おまえでなければ。

かけ離れているお互いを思っての感情のぶつかり合いは激しいのに、どこか夢見がちで女性向けの恋物語の様相を帯びて胸に響いた。
最後まで一気に読みきって、二人がとても愛おしい。しばらくこの余韻にひたりたい。

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