幻想的な世界。少しばかりファンタジー要素を含む、海賊の物語。相手を想う事の難しさ、複雑さ、大切さ。海で拾った小さな命。その命へ愛を注いだ人間とは違う存在。相容れない愛。踏み込んではいけない一線に、海に生きる者が見つけた答えとは。詩的な文章で綴られる物語を、ぜひ堪能して下さい。おススメです!
他作品からに紹介で興味を持って拝読。紹介通りの美しい世界に没頭できました。良かった。命、家族、夢、恋、浪漫。今日はいい夢が見れそうです。
世界の海きってのアウトロー。秘密に包まれた、その生い立ち。髑髏の旗も白旗も掲げぬ。誇らしげに掲げるは、黒旗。彼女に触れられるのを避けるのも、自分の薬指の爪を剥いだのも、海にも陸にも縛られずに生きるのも、名前を呼ばせず、呼ばないのも、すべて知って、わかって、想っているから。飄々たる振る舞いの奥に、深く広い愛を隠して。孤独にして多感なる海の燕、海に愛される伝説の男。すごく好き。
らしい文体で描かれる物語。これはやっぱり冬春夏秋さんにしか書けないな、としみじみと思いました。夜明けの新鮮な空気を吸い込むような、心地良い読了感がありました。オススメです。
読者は証明する。叙事詩のように語られる風説は事実だったのだと。伝説と化した海賊は人魚の躊躇いによって『生きた』。凪や時化にかき混ぜられ、陸で生まれた荒くれ者たちを飄々と躱しながら、それでも海を愛した彼に敬意を表さずにはいられない。異種族間にも情は宿り、愛は育まれ、恋は抱ける。たとえ共にはいられなくても、人魚は歌い続ける。そして、彼も同じように。これは、彼らの奇想天外な人生の片鱗を味わえる、一筋縄ではいかないお伽噺。やさしい奇蹟に満ちた、新たな航海のための記憶。素敵なカップに注いだ一杯のような読書体験をどうぞ。
何て素敵な夢物語、彼の周りは愛に満ちて、けれど誰の姿も無く。何て不敵な立ち姿、彼の足元は自由に満ちて、だから何の保証も無く。何て詩的な人生譚、彼の過去は輝きに満ちて、それでも【底】には縛られなく。こんな儚く、切なく、美しく響く泪声を、僕は読んだことがないし、書けたこともない。まるで月のような物語だ、どことなく寂しげなのに、けして暗くはない。そうか、と僕は/君も気付く。【彼】に恋してしまったのか、と。
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