読者は証明する。叙事詩のように語られる風説は事実だったのだと。
伝説と化した海賊は人魚の躊躇いによって『生きた』。
凪や時化にかき混ぜられ、陸で生まれた荒くれ者たちを飄々と躱しながら、それでも海を愛した彼に敬意を表さずにはいられない。
異種族間にも情は宿り、愛は育まれ、恋は抱ける。
たとえ共にはいられなくても、人魚は歌い続ける。
そして、彼も同じように。
これは、彼らの奇想天外な人生の片鱗を味わえる、一筋縄ではいかないお伽噺。やさしい奇蹟に満ちた、新たな航海のための記憶。
素敵なカップに注いだ一杯のような読書体験をどうぞ。