概要
そんな魑魅魍魎と隣り合わせの世界で、妖怪退治『左団扇』を経営する二人組。
鵺使いの亜緒と、「妖殺し」の異名を持つ蘭丸。
しかし、いつも『左団扇』には閑古鳥が鳴くばかり。
そんな店の扉を久しぶりに叩いた客、藤野宮 宗一郎は「殺したはずの彼女に命を狙われている」という。
奇妙な依頼人の命と自分たちの生活費のために、二人の妖退治屋が軽い腰を上げる。
彼らを取り巻く個性溢れるキャラクター達と、非日常的日常と妖しい世界。
―主な登場人物紹介―
雨下石 亜緒……青い髪と瞳を持つ鵺使いの青年。主人公。
鵺……雨下石家が祀るモノ。
渚 蘭丸……妖殺しの異名を持つ美貌の剣客。もう一人の主人公。
妖刀『電光石火』……この世界に五振り存在する妖刀の一つ。所有者は蘭丸。
おすすめレビュー
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- ★★★ Excellent!!!妖しく 儚く 温かく されど時には 花と散りゆく
妖怪退治屋『左団扇』に今日も今日とて閑古鳥。
ですが、経営者の二人に光るところがないわけではありません。
むしろ殺しても死なないような、しぶとい魅力の持ち主です。
どう考えても一癖ある洋装の陰陽師、亜緖。
真面目に見えて付き合いのいい妖刀使い、蘭丸。
舞い込む事件は、いずれ劣らぬ難物ばかり。
妖怪退治は言うに及ばず、人探しやらお家騒動、遂には人を斬れというのも。
妖しくも黒々と翳った陽の下、活き活きと躍動する妖怪変化。
陰陽道や妖刀も切れ味抜群。
そして、何よりその語り口。
物語世界を訥々と紡ぐその文体は、温かさすら感じさせて雰囲気たっぷり。
そして、二転三転、七転八倒。
およそ難…続きを読む - ★★★ Excellent!!!「オススメです」と100回くらい叫びたい
「オススメです」と100回くらい叫びたい作品です。
読んだ瞬間、すっと左団扇奇譚の世界が入り込んできて以来、すっかりファンになりました。
どこで読んだこともない唯一無二の世界観、そして優雅で風情を感じさせる文章、個性豊かな登場人物と、どこをとっても秀逸です。
登場人物たちが生きる黒い太陽の世界で、彼らの宿命は時に重く、けれど強く、泥の中を張ってでも生きてゆこうとする姿が美しく見えます。ことろどころに、くすりと笑わせる要素もありの作者様のセンスが光ります。
何より、言葉遊びが雅であるからこそ、この唯一無二の世界観が確立されているように感じました。
音叉様はいつ小説家デビューされて…続きを読む - ★★★ Excellent!!!妖しき世界に美丈夫二人と鵺、揃えば彼等に敵は無し
まさに大正怪異奇譚という言葉が相応しい作品ではないでしょうか。
主人公達二人が妖や幽霊などの怪異と相対し、時に退治や対話をしたり、時に人の愛憎や家柄のいざこざに巻き込まれたりといった様子は、現代よりも少し昔、着物やバンカラ、和洋折衷が似合う大正や明治時代の世界観や情景が自然と脳裏に浮かびました。
言葉選びもお洒落で、しかし読み辛くないところが良いです。話も良いテンポで進んで行くので、読んでいて爽快、そして楽しい作品です。
登場人物の名前が全員特徴的な点も面白いですね。
人物それぞれの性格も個性があって、それでいてどこか秘密を抱えていたりと魅力的です。
また話ごとに作品の雰囲気が違ったりす…続きを読む - ★★★ Excellent!!!軽妙洒脱な語り口が光る、傑作和風怪異譚。
黒い太陽が昇る異世界を舞台とした物語だ。
ジャンルとしては依頼を解決していくバディもの。
鵺使いの術師の亜緒と、剣客の青年蘭丸の二人が営む『左団扇』という退治屋を中心にタイトル通りの奇譚が展開されていく。
言葉選びに明治、大正を思わせるレトロクラシカルな要素が散りばめられている。
高い筆力と相まって情景描写が美しく、奇妙かつ愛嬌のある登場人物たちの心理も細やかに描かれている。
そんな文章が、薄闇に包まれた静かな舞台と素晴らしく噛み合っている。
上記の要素の中に気になる部分があれば、まずはぜひ一章が区切られる6話まで読んでみていただきたい。
完成度の高い物語にすぐ引き込まれること請け合い…続きを読む - ★★★ Excellent!!!和、耽美、妖かし。黒い太陽の下で、語られし幻想譚。
耽美な和の世界の中で、交わされる心、交わされる刃、そして呪い。
主人公の亜緒が、その魅力で様々な存在と絆を結び、それ故に災難に巻き込まれ、それ故に救われ、そして様々な背景を背負った人々の依頼を解決していく和風ファンタジーとなっております。
この作品の魅力はやはり主人公にあります。彼自身の人間関係と、依頼人達の背後や事情が、ちょうど縦糸と横糸になり、主人公を描く為の一枚のタペストリーになっていきます。
幽玄な物語の中で主人公の取る一つ一つの行動に筋や美しさを感じている間に、貴方もきっと物語の魅力にとらわれることでしょう。
ぜひとも一度御覧ください。