妖怪退治屋『左団扇』に今日も今日とて閑古鳥。
ですが、経営者の二人に光るところがないわけではありません。
むしろ殺しても死なないような、しぶとい魅力の持ち主です。
どう考えても一癖ある洋装の陰陽師、亜緖。
真面目に見えて付き合いのいい妖刀使い、蘭丸。
舞い込む事件は、いずれ劣らぬ難物ばかり。
妖怪退治は言うに及ばず、人探しやらお家騒動、遂には人を斬れというのも。
妖しくも黒々と翳った陽の下、活き活きと躍動する妖怪変化。
陰陽道や妖刀も切れ味抜群。
そして、何よりその語り口。
物語世界を訥々と紡ぐその文体は、温かさすら感じさせて雰囲気たっぷり。
そして、二転三転、七転八倒。
およそ難物にふさわしく、事件は一筋縄で片付きません。
あるいはひねりを利かせ、あるいは機転で起死回生。
その先に待つものは、笑顔の未来か苦い末路か。
いずれ妖しい顛末の数々、化かされたと思ってご賞味あれ。
その先に残るものは、さていかに。
「オススメです」と100回くらい叫びたい作品です。
読んだ瞬間、すっと左団扇奇譚の世界が入り込んできて以来、すっかりファンになりました。
どこで読んだこともない唯一無二の世界観、そして優雅で風情を感じさせる文章、個性豊かな登場人物と、どこをとっても秀逸です。
登場人物たちが生きる黒い太陽の世界で、彼らの宿命は時に重く、けれど強く、泥の中を張ってでも生きてゆこうとする姿が美しく見えます。ことろどころに、くすりと笑わせる要素もありの作者様のセンスが光ります。
何より、言葉遊びが雅であるからこそ、この唯一無二の世界観が確立されているように感じました。
音叉様はいつ小説家デビューされてもいいくらい実力のある作家様です。
読み進めれば、読み進めるほど魅了されて虜になること間違いなし。
是非、いつか本として手に取らせていただきたいです。
登場人物はみんな大好きなのですが、特に好きなキャラクターは亜緒くんとノン子ちゃん。
なんだか、目の離せない二人です(о´∀`о)
まだまだ謎の深まるストーリー。
是非、みなさまも音叉様の世界をお楽しみください。
まさに大正怪異奇譚という言葉が相応しい作品ではないでしょうか。
主人公達二人が妖や幽霊などの怪異と相対し、時に退治や対話をしたり、時に人の愛憎や家柄のいざこざに巻き込まれたりといった様子は、現代よりも少し昔、着物やバンカラ、和洋折衷が似合う大正や明治時代の世界観や情景が自然と脳裏に浮かびました。
言葉選びもお洒落で、しかし読み辛くないところが良いです。話も良いテンポで進んで行くので、読んでいて爽快、そして楽しい作品です。
登場人物の名前が全員特徴的な点も面白いですね。
人物それぞれの性格も個性があって、それでいてどこか秘密を抱えていたりと魅力的です。
また話ごとに作品の雰囲気が違ったりするので、そういう点も飽きさせない要素となっています。
主人公二人のユーモラスな会話だったり、妖や幽霊との戦いだったりというのが基本の中で、そこにふと切ない話や深読みさせる話などが入ったりするので、魅せられてしまいました。
是非皆さんも二人と鵺の隣に並んで、彼等の行末を見て行ってください。
黒い太陽が昇る異世界を舞台とした物語だ。
ジャンルとしては依頼を解決していくバディもの。
鵺使いの術師の亜緒と、剣客の青年蘭丸の二人が営む『左団扇』という退治屋を中心にタイトル通りの奇譚が展開されていく。
言葉選びに明治、大正を思わせるレトロクラシカルな要素が散りばめられている。
高い筆力と相まって情景描写が美しく、奇妙かつ愛嬌のある登場人物たちの心理も細やかに描かれている。
そんな文章が、薄闇に包まれた静かな舞台と素晴らしく噛み合っている。
上記の要素の中に気になる部分があれば、まずはぜひ一章が区切られる6話まで読んでみていただきたい。
完成度の高い物語にすぐ引き込まれること請け合いだ。
耽美な和の世界の中で、交わされる心、交わされる刃、そして呪い。
主人公の亜緒が、その魅力で様々な存在と絆を結び、それ故に災難に巻き込まれ、それ故に救われ、そして様々な背景を背負った人々の依頼を解決していく和風ファンタジーとなっております。
この作品の魅力はやはり主人公にあります。彼自身の人間関係と、依頼人達の背後や事情が、ちょうど縦糸と横糸になり、主人公を描く為の一枚のタペストリーになっていきます。
幽玄な物語の中で主人公の取る一つ一つの行動に筋や美しさを感じている間に、貴方もきっと物語の魅力にとらわれることでしょう。
ぜひとも一度御覧ください。
『闇』。それは人の心の不安を喚起する。
闇は概ねにおいてネガティブであり、単純な二元論のもとでは『悪』のレッテルを添付される。
『左団扇奇譚』の世界も闇を基調とする。
人間のエゴが、狂気があり、妖魅の影が至るところに差す。
しかし。その闇は透徹としており、不思議に読む者の心に染み入る。
これを「心地好い」というのである。
主人公らは飄々としており、あくまでポジティブ。闇のステージで生き生きと躍動する。まるで自らの中の闇までエネルギーとするかの如くに。
幻想、怪奇、そして耽美なる趣のめくるめく一時が、この物語にはある。
ああ、心地好い。
未だ読まれぬ人あれば、一読これ お薦めしたい。たちまち音叉氏の術に蠱(まじこ)られ、一気に完読されるであろう。
『左団扇奇譚』は、あなたの心の『明るき闇』なのでーー
ああ、何故もっと早くこの物語の存在に気づかなかったのか……。
小一時間くらい自分自身を問い詰めたい。それくらい、この物語は魅力的である。
和風(おそらく明治~大正くらい? 作中で明示的に記されていないため、この箇所は私の想像です)な舞台設定に、耳に馴染みのある怪異たち。
それらに立ち向かう亜緒と蘭丸の掛け合いが心地よく、さらりと読めてしまう。
ここまで書いて、ようやく理解した。
要するに、造りが上手いのだ。
その丁寧さが心地よく、次々と頁をめくってしまう。そんな不思議な力のある、そんな物語なのだ。
どうか皆様も一読いただければ、この気持ちをお分かりいただけるだろう。