妖しく 儚く 温かく されど時には 花と散りゆく

妖怪退治屋『左団扇』に今日も今日とて閑古鳥。
ですが、経営者の二人に光るところがないわけではありません。
むしろ殺しても死なないような、しぶとい魅力の持ち主です。

どう考えても一癖ある洋装の陰陽師、亜緖。
真面目に見えて付き合いのいい妖刀使い、蘭丸。

舞い込む事件は、いずれ劣らぬ難物ばかり。
妖怪退治は言うに及ばず、人探しやらお家騒動、遂には人を斬れというのも。

妖しくも黒々と翳った陽の下、活き活きと躍動する妖怪変化。
陰陽道や妖刀も切れ味抜群。

そして、何よりその語り口。
物語世界を訥々と紡ぐその文体は、温かさすら感じさせて雰囲気たっぷり。

そして、二転三転、七転八倒。
およそ難物にふさわしく、事件は一筋縄で片付きません。
あるいはひねりを利かせ、あるいは機転で起死回生。
その先に待つものは、笑顔の未来か苦い末路か。

いずれ妖しい顛末の数々、化かされたと思ってご賞味あれ。

その先に残るものは、さていかに。

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左団扇奇譚

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