恋愛ものと聞いて、パッと想像する作品とは趣が異なります。
私見かもしれませんが、多くの恋愛ものは、まず恋に落ちる事ありきで物語が展開するのが一般的かと思います。
ですが本作は、明確に浅緋の恋愛感情が描写される場面が驚くほどに少ない。
それどころか、トキ君が登場しない回すらあります。
でありながら、間違いなく"愛の物語"であると断言できるのが本作の特徴でしょう。
これは一人の、不器用で、口下手で、意地っ張りで、しかし大人になりきれない少女の成長を描いた物語。
時に隣人であり、時に兄であり、時に父のようですらあった彼がしてくれた、ひとつひとつの事の意味に気づいていく物語。
突然始まった家族という関係に始まり、成長とともに彼の優しさに気づき、信頼し、憧れを経て、愛に至る物語。
そもそも愛の根底には、相手を理解し、敬う姿勢があるものです。
愛を育むとは、本来こういう事なのかもしれません。
2話分まで読ませて頂きました。こんなにも読みやすく、想像しやすい描写の方法があったなんて。その方法を忘れていただけだと言ってしまえばそれで終わりかもしれないのですが、それほど、作者様の作中での描写は自然な上分かりやすく、そして退屈しないどころか気がつけば夢中になっている、素敵な描写力を持っていらっしゃいます。続きを楽しみにされていらっしゃる方の気持ちがとてもよく分かりました。
そしてトキに対しての、「うっざ!」。この言葉に、幼い頃に似たようなことを男の子に言ってしまった記憶を思い出しました。嫌いで言っていたわけではないのですが、何だか、感情移入して読ませていただきました。
最新話(オムライスとケチャップ2)まで拝読しました。
まず最初に、作品の傾向を考察してみますと、一般的なラブコメ系ラノベとはかなり趣が異なるお話です。
あらすじ部分で、「朝ドラ」が比較対象に挙げられていますが、まさにそういったテイストが強く、一般文芸の青春小説に近い印象を持ちました。
内容に関しては、ヒロインたる浅緋という女の子の成長を、劇中における時間の流れを通じて、ひたすら追い掛けていくというもの。
何より特徴的なのは、所々に鏤められた作者さんのこだわりが伝わる各種の描写でしょう。
心象描写は機微の変化が極めて自然に、それでいて優しく描かれ、情景描写は一つひとつの事物がひたすら丁寧に積み重ねられて、澄んだ空気感を演出しています。
地の文による作中の雰囲気作りや独特な間合いの取り方は、会話文のやり取りを中心としたラブコメに慣れた人には、やや面食らうかもしれません――が、同時に他であまり見掛けない独自性であり、作風は「緩い」のに、ある側面ではとても「尖っている」という、不思議な二律背反を一つのストーリーで引き受けている作品でもあります。
また、独特な作風と言っても、決して読み難いわけではなく、むしろスイスイと目で追えるテキストは非常に軽快です。
年の差カップルの浅緋とトキの関係性も含め、全体に爽やかなイメージが漂う物語ですので、男性のみならず女性でも楽しめる作品ではないでしょうか。