丁寧に描写を積み重ねながら女の子の成長を綴る、朝ドラ風ストーリー

最新話(オムライスとケチャップ2)まで拝読しました。
まず最初に、作品の傾向を考察してみますと、一般的なラブコメ系ラノベとはかなり趣が異なるお話です。
あらすじ部分で、「朝ドラ」が比較対象に挙げられていますが、まさにそういったテイストが強く、一般文芸の青春小説に近い印象を持ちました。

内容に関しては、ヒロインたる浅緋という女の子の成長を、劇中における時間の流れを通じて、ひたすら追い掛けていくというもの。
何より特徴的なのは、所々に鏤められた作者さんのこだわりが伝わる各種の描写でしょう。
心象描写は機微の変化が極めて自然に、それでいて優しく描かれ、情景描写は一つひとつの事物がひたすら丁寧に積み重ねられて、澄んだ空気感を演出しています。

地の文による作中の雰囲気作りや独特な間合いの取り方は、会話文のやり取りを中心としたラブコメに慣れた人には、やや面食らうかもしれません――が、同時に他であまり見掛けない独自性であり、作風は「緩い」のに、ある側面ではとても「尖っている」という、不思議な二律背反を一つのストーリーで引き受けている作品でもあります。
また、独特な作風と言っても、決して読み難いわけではなく、むしろスイスイと目で追えるテキストは非常に軽快です。

年の差カップルの浅緋とトキの関係性も含め、全体に爽やかなイメージが漂う物語ですので、男性のみならず女性でも楽しめる作品ではないでしょうか。

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