いわゆる特殊設定ミステリで、大変面白かったです。
たしか昔「良いトリックほど驚きが大きく、それでいてシンプルだ」というような言説を聞いたことがあります。
あくまで一定のルールに則りつつも、巧みに読者の盲点をついている、そして言われてみればなるほどと即座に理解できるわかりやすさがある――
だから真相が判明した瞬間に「してやられた」という感覚になる。
それこそ優秀なトリックだというわけですね。
まさにこちらの作品では、そうした本格の醍醐味を味わうことができる内容になっていると思います。
傾向的には、メフィスト系新本格のテイストがお好きな方なら、きっと楽しめるはず。
オススメです!
特殊設定ミステリです。
死んでも一度だけ蘇るという能力を前提としています。
しかしながら、この能力には厳格なルールが設定されており、読者にもそのことは明示されています。
従って、アンフェア感や肩透かし感はなく、作者と読者の間の正々堂々としたゲームが成立しています。
特殊設定ミステリはなんか苦手だなあという方でも、十分に楽しめると思います。
2つの殺人が起きますが、どちらも意表を突く謎解きで、特に2番目の殺人の真相にたどり着ける読者は皆無でしょう(と挑発してみる)。
また、本格ミステリーにありがちな停滞感がないのもいいです。
テンポを最後まで崩さず、トリックを惜しげもなく披露するという点が一貫していて潔いと感心しました。
本格ミステリー好きの方には、躊躇なくおススメする次第です。