宝石獣の森と番人

一万字の短編で、ここまで読後の余韻が残る作品が他にあっただろうか？
これぞファンタジーという世界観だが、まるで大人向けの絵本のようなストーリーがきらめきを放つ。
色とりどりの宝石、美しい精霊、自然描写などと対比する人間の欲…。宝石獣の悲しい謎に至るまで、読者の心をひきつけてやまない。
読了後におのれの在り様を考えさせるところは、ライトノベルの域を超えて純文学と言ってもいいのではないだろうか。
まだ読んでいない方は、ぜひ不思議で素敵なこの作品の世界観にしばし浸ってみていただきたい。

―見事な宝石をその身に宿した獣の住む森がある。
そんなお伽噺に引き寄せられ咎人はまた森へと消える。

傭兵クォーツは行方不明となった商人捜索の依頼を受け、不思議な森へと足を踏み入れた。
そこでの出会いが彼の運命を変えてしまうとも知らずに。

作者様の繊細な描写力で描き出される宝石の森にまつろう美しく、残酷で、そして罪深い物語。
是非ご一読ください。

身体の一部が宝石に置き換わった動物たちと、彼らの住む森を描いた異世界ファンタジー作品です。

とある森には、世にも珍しい宝石を生やした動物が住む。その噂は多くの密猟者を呼び込み、希少な宝石は破格の値段で市場へと並びます。

強欲の末に命を刈り取り、選択によって望みを無念にも取りこぼす。

輝きが絶える時まで、この世にあり続ける宝石の物語。

ぜひ読んでみてください。

悲しいのか、綺麗なのか、それとも優しいお話なのか、
どう捉えるのか読者それぞれの見解がありそうです。

短編なのに独特の世界観が持つ雰囲気、設定がスルッと入ってくるところは、書き手の上手さを感じました。

物語の舞台は謎の「宝石獣」が生息する森。
人の欲を掻き立てる宝石獣を巡り、密猟者、権力者、そして宝石獣の番人……様々な立場の人間が交わり、宝石獣の秘密が明らかになるのですが……。

ちょっとダークで仄暗い雰囲気の、本格異世界ファンタジー作品です。
美しく整った文体で書かれているためか、宝石獣の、ぞっとするような秘密とのギャップが印象的でした。

その秘密を知ってもなお、「宝石獣ってきっと美しいんだろうな、一目見てみたいな」と思ってしまう私はやはり、愚かな人間なのかなぁ、なんて思うのです。

幻想的な昏い森、そこに生息する宝石獣。

美しく輝く宝石獣を描写する作者様の優しい文体が素晴らしいです！
それがさらに物語を引き立て、一万文字という短い物語の読了後の満足感を作っています。

表現やルビも幻想的な雰囲気を醸し出し、あっという間に物語の世界に入っていけます。
スラスラと読んでいける、ボリュームたっぷりの御作です。

一読の価値ありです。ぜひお読みください！

第１晶から意外性があり、惹きこまれました。読み終わったとき、なかなか消化できない気持ちが残りましたが、それがより神秘性を高めているような気がします。残酷も美しい話。

このレビューは小説のネタバレを含みます。全文を読む（317文字）

美しく、優しい。それだけで充分ではないでしょうか？
名作に、細かい解説は不要な気がします。
是非お読みください！　
お読みいただけましたら、名作だとご理解いただけると思います！

海外の絵本や童話のような雰囲気の物語です。
幻想的で奥深く、まさに森の中へと誘われている気持ちで読み進めました。

子供の頃に絵本として読んでいたなら、きっと表紙や挿絵の美しさに魅入られ、それらだけがくっきりと記憶に残る。
そして、大人になってから読み返した時、ようやくストーリーの重厚さと美しさに気が付き、また深く心に刻まれることになる。
触れる毎に、何度でもその美しさの虜になってしまうのでしょう。
そんな妖しい魅力があると思います。

文学に精通した作者様の技量が、遺憾なく発揮されている作品だと感じました。