大杉巨樹様の作品『ロールプレイング・ラヴァー』を読み進めていると、どこか懐かしくも切ない風が心に吹き抜けていくような感覚に包まれました。硯徳の抱える静かな喪失感や、町の伝承が潜む不思議な空気感。そのすべてが、忘れかけていた記憶をそっと呼び覚ますようです。
田舎町に漂う停滞と、少しずつ広がる希望の芽吹き。妹の杏夏が少しずつ立ち直る姿には、日常の中で紡がれる優しい物語の温もりがありました。謎めいた輝冥の登場が、まるで人生という物語に新たな幕を開ける導入のようで、不思議と胸が高鳴ります。
人々が互いに支え合い、ゆっくりと未来を切り拓いていく様子に、読む者としても「一緒に歩いている」感覚が芽生えます。この物語は、風に乗せて大切な何かを届けてくれる――そんな優しい奇跡のように感じられました。
つくづく面白い。他人のオフレコな話とか聞くのってたまんないですよね。
古くからある商店街の課題、最新の心理テクニック、そして人間味溢れる登場人物たち(キャラがガッツリ立ってる!)、近年巷を賑わしている社会問題、歴史・文化・伝承など多岐にわたる知見・素材を組み込みながら、陰謀の糸でしっかりまとめ上げ、物語の構図を読者にわかり易く提示してくれます。
面白くて面白くてついついページをめくっちゃう。へー。ほー、おおっ。もう言葉ないなあ。この小説は僕の人生を豊かにしてくれます。
できることなら商店街の住人となりバー・アンドレで飲みたい。そこでヒロイン達の誰がいいかなんて与太話でも…… あ、僕も纐纈と同じく秋穂先生推しです。いや桃寧さんかも。(巫女コスプレーヤーって⁉︎)
まだ途中ですが最後まで追いかけますっ。
いまの日本によく見られる昔ながらの情緒はではあるけれど、特に栄えてもいない地方都市、猿上町。
この町を舞台とした恋愛ミステリー。
主人公、滝尾硯徳の参加した街コンから物語は動き出します。
物語の随時に散りばめられた違和感。
挿しこまれた文章。人名。地名。怪異譚の趣。
それらは伏線なのか、物語の道具立なのか。予断を許さないミステリー。
重層構造の物語の結末とは。
……とは書きましたけれど。
本作は、重々しいばかりの話というわけではありません。
コミカルな会話や場面も随筆もあり、楽しく読み進められます。
主人公の妹である滝尾杏夏など、とても微笑ましいキャラクターです。
ジャンルで一括りにできない物語を求めている方、ぜひ一読了ください。
主人公で塾講師・硯徳(スズノリ)は、両親を火事で亡くしてからは妹(料理下手)と2人で暮らしているが、何かと問題の多い妹への愛が強く25歳にして彼女歴無しだった。
そんな折、町を活性化するためスズノリも参加している青年部で町主催の婚活パーティを催すことになった。男女20名ずつの参加者にはスズノリも妹もいた。
隣町から来た男たちがパーティを台無にさせようとしたが、青年部たちの用意周到さで事なきを得る。しかし、そのパーティのあとでは会場となったレストランが放火されるという事件が起こる。しかしそれはさらに大きな事件の始まりだった。
感想:この物語の主な舞台である猿上町では、「猿上町では死んだら風になる」「鬼に魅入られたら鬼になる」という不穏な言い伝えがある。
また、冒頭で夏目漱石の「こころ」について語る不気味な男など、各所に様々なキーワードが配置されていて、町の住人たちの日常のなかに潜む何者かの存在が感じられ、非常にミステリアスである。
特に、町の住人達の背景や行動がリアリティ溢れていて、猿上町がまるで実在の町のように感じるところもポイントが高いと思う。
(妹さん、お味噌汁にシュールストレミングはやめたほうがいいと思います(;゚;Д;゚;))
オススメです🌳
主人公は両親を不慮の事故で亡くし、妹と一緒に生活を送っていた。主人公はこの妹が自立できるまで、兄として見守っていく覚悟でいた。その一方、主人公は私塾の講師として子供たちの人気者でもあった。
そんな中、商店街で街コン、つまりは商店街を舞台とした婚活イベントの企画に、主人公も参加することに。このイベントは、下火になってきている商店街を盛り上げるために企画したものだった。注目された参加女子は、春夏秋冬の文字が入る名前を持つ女性たちだった。その中には主人公の妹や主人公と親しい剣道女子の名前も挙がっていた。そして意外だったのが、作家の放蕩息子先生の正体で……⁉
つつがなく、婚活イベントが催されるはずが、犬猿の仲である隣町の妨害に遭ってイベント乗っ取られるかもしれなくなり……。
さらにその夜に火災が発生したことで、商店街を要する町の人々の様々な顔が明らかになっていく。
一体主人公はどうなってしまうのか?
そして主人公の妹は立ち直れるのか?
隣町と犬猿の仲という舞台設定が、ストーリーと合っていて、相乗効果を生んでいます。物語の中で「御神木」と引けを取らない大樹が出てくるのですが、小生的にそれが人々を見守っているようで好きでした。
是非、御一読ください。