木山喬鳥

仙人を描いた物語。 淡々とした語りは民話のようで寓意があるようで、巷説の断片のようで。 なんとも判じられないうちに物語は閉じます。 渦とは何か。 水とな何か。 壺とは何か。 仙人…続きを読む

西暦三〇一六年、秋は禁止されました。 秋に関わる物事は秘匿され、その国から消えたのです。 主人公の向井実は禁止資料室で働く公務員。 業務は秋に関連する情報とその媒体を整理し保管す…続きを読む

────〝私〟は、この街が嫌いでした。 祀られた蜍迦羅様の像が不快でした。 設えられた祠を厭わしく思っていました。 忘れていた。 そんな自覚さえもなかった友人を少女が思い出…続きを読む

夢の中でいつも見る階段。 これまで足を踏み入れなかった処。 ある時日々の暮らしの中で溜まった気鬱が、主人公をその階段を進ませた。 そこから始まる物語です。 昨今、見られないほど…続きを読む

本作は、お仕事中の情シスさんが生成ＡＩの作成した小説をカクヨムに投稿することについての意見を述べたものです。 生成ＡＩの作成した小説（以下ＡＩ小説）は、規制すべきであること。 一…続きを読む

物語を書く事。 物語を評価される事。 このふたつは、まったく別のことです。 書く事は自分しかできない事。 評価する事は他人しかできない事です。 関連もありません。 書けばどうにか…続きを読む

次々に浮かぶ言葉と文章が、就寝時に見る夢について語ります。 その語ること自体が、夢のような形をして並んでいます。 脈理が辿れない。 意図も汲めない。 まるで臨終の床にいるような諦…続きを読む

怪異まみれのボーイミーツガール、なのでしょう。 主人公、嫌がっているみたいなのが面白いのです。きっとツンデレです。 もちろん受け取り方にもよりますけど、本作は怖いという印象よりは…続きを読む

ある不幸な出来事により、望まない方向へ人生が変わってしまった主人公。 そんな彼女の身に起きた、新たな事件とは──── 強く心身を揺さぶる出来事は、人を変えてしまいます。 作中の主…続きを読む

暮らしは、生きることの基本です。 衣食住の生活を整えることから、人はより良く活かされるのです。 悠鬼よう子さんが詠まれ、川柳の形となった生活の知恵たちが並んでいる本作。 どの作品…続きを読む

ぴよぴよさんの家にいたバークレーというイヌとの思い出を綴った物語です。 その家での新参者である子どもぴよぴよさんが微笑ましいです。 そして泰然としている先輩のバークレーがユーモラ…続きを読む

一話完結でお送りする、様々な恐怖を表す掌編の数々。 芋虫、蓮の花、駅、 一度でも目にした言葉や考え方は読んだ人の中に残ります。 見なければ平穏に暮らせてたのに。 忘れられたら…続きを読む

１９６０年代から７０年代にかけての時代。 日本のテレビ番組の１日のタイムテーブルを繙くことから始まり、日本の大衆娯楽文化や世相の変遷を眺める。そんなエッセイです。 ６０年前から現…続きを読む

寝ている時に、傍にいて欲しくない存在。 誰しも、いくつがあると思います。 犯罪者。正気でない者。害獣。心霊。自動掃除ロボ等など。 そんな致命的なもの以外もありますよね。 死ぬほど…続きを読む

なんでも手作りする人の物語です。 そして、妄執の物語かもしれません。 物事には〝これで良い〟という程度があります。 現実には様々な制約があり、個人により出来ることには限りがあるか…続きを読む

いくつもの点景のように在るエピソードが繋がって、不思議な印象を形づくる物語です。 〝え、そうなの？〟 そんな驚きがあるのです。 悟と狗尾の成り行きを追ううちに、作者の過去作が…続きを読む

矢田部ミチルの小さな決意から始まる物語です。 そこから始まる視点は、ピョンピョンと軽やかに飛んで時間経過や登場人物を繋ぎます。 連載中のため物語がどこへむかうかはまだわからないの…続きを読む

キャッチコピーとあらすじに偽りなしです。 復讐する地球人の物語です。 兎に角。話が早い。 読む者は怒涛の畳み掛けに流されて行きます。 しかし、それで良いのです。 何も考えずストー…続きを読む

素人の思うところの、歯を直すって行為は痛み１００％消してほしいということで。 痛くさえなくなったらば、最悪虫歯のままでも構わない。 そんなくらいの勢いですよね。そうですよね。 と…続きを読む

まるで秋風が満面を撫でるような清涼感があります。 〝物語を書いたので褒めてほしい〟 頑是ない幼子の求めるような語りかけです。 素直であること。 それはとても素晴らしいことです。 …続きを読む

源義経。 日本史に残る戦術的軍事行動の天才。 多くの方が、そう評します。 本作は源氏に対して叛乱した後、伊勢に潜伏した大掾信兼を討つ義経のを描く物語です。 源義経の持つ、軍事的…続きを読む

ゾンビになったのに、人としての意識を保ったままの主人公が、人間に戻るために様々に考えつつ行動する物語。それが本作です。 ゾンビパンデミックとも取れる状況。 とても大変な事態が日本…続きを読む

描かれているのは、心身に欠落を抱える児童たち。 親元を離れて〝賢者の家〟と呼ばれる場所で共同生活を営んでいます。 子供らの視線で眺める世界は、とても不明瞭です。 読む者は、この世…続きを読む

金縛り。 その現象に焦点を絞った物語です。 多くの方に経験があるであろう就寝中に目が覚めていると自覚しているのに、身体を動かせなくなる状態です。 身体を引っ張られる感じや押される…続きを読む

ま。裁かれる側なんでしょうけどね。私はね。 本作は、お仕事中の情シスさんが自主企画を立ち上げられた際に感じた違和感を記したものです。 とにかく。企画に参加する多くの方が、書かれ…続きを読む

禍々しさの欠片もない明るい夏の花が恐怖を象る。 幸せな恋人たちを奈落に落とす予想もしない奇怪な現象とは。 凡百の夏の怪談とは異なる、白昼夢のような一編です。 どうぞ御一読ください…続きを読む

九月の夜の海辺の記憶。 心のなかに静かにあり続ける情景は、音や匂いまでもを丁寧にすくい上げてとどめているのです。 静かな描写の連なりです。 けれどその行間には、満ちることのない深…続きを読む

伝えたい言葉を相手に渡すまでには、その道筋を作るために多くの言葉が費やされます。 前置き、理由、気遣い、戸惑い、挙げきれないほどの種類の言葉たちが手に手を取って協力するのです。 …続きを読む

楽しみは自分で作るものですよね。 自分を喜ばせるものを見つけて集める。 夏風さんは、それがとても上手なのです。 本作は、夏風さんが興味のあるものを見つけて試し工夫して楽しむ。 そ…続きを読む

人類が滅亡してしまった後に残された機械たちの物語です。 主人公が楽しく日常を過ごす。 その様子が、ほのぼのとしているのです。 こんなポストアポカリプスな物語なら楽しく読めますね…続きを読む

山の中腹にある古びた風車型の時計塔。 本作は、主人公の僕が時計塔の中へに誘われて体験する幻想譚です。 気がつけば、主人公は時計塔の中で同時に無辺に広がる星の海のなかにいる。 そん…続きを読む

本作は未来のナビゲーションシステムを描いたＳＦショートストーリーです。 ８５７文字で表現された意表を突く物語は、読む者へ一瞬の光のように鮮やかな印象を残すことでしょう。 正統的…続きを読む

どちらも大きく膨らんでおります。 まあ。膨らむのは夢だけでもないって話ですけどね。 さて。まず言っておきたいことは、身体の部位の大きさで優劣をつける。 そんな価値観は良くないの…続きを読む

地図にない川。 誰にも秘密にしている川。 その川でのフライフィッシング。 水面の瀬音や燦き。季節の移ろい。 繰り返し綴られる美しい言葉。 リフレインされる音韻。 散文詩のような綺…続きを読む

もうすぐ血の制裁が行われるという話です。ただし、正義の鉄槌です。 いろいろな事情とか情感とか、どうでもいいので、サクッと済ますのです。 交際関係を解消してやり、ラムネの瓶で彼氏…続きを読む

愛犬の死を悼み樹木葬として庭の桜の樹の下に埋めた幼い頃の祖父。 その後、桜は毎年見事な花を咲かせるようになります。 満開の花をみた隣人が、祖父へ話しかける事から物語は動き出します…続きを読む

子どもの頃の感情に任せた行動の後のやるせなさや、わかっていても自分の非を認められないもどかしさ。 そんな思いを抱えた主人公のナツコが偶然手にした本。 その、へんてこな本とナツコが出…続きを読む

きっと、普段は良い勇者なんです。 だけど、食べ物が絡むと見境が無くなるのです。 一心不乱に食べ物の恨みを晴らすし。 猪突猛進に美味な魔物を狩り尽くすし。 勇往邁進してレア食材を求め…続きを読む

〝帰るコール〟 そう呼ばれた習慣も、今は昔となりました。 家族があり、家庭という営みの場がある方の幸せの合図だったのでしょう。 本作では、その合図が別の縛りとして描かれています。…続きを読む

独特の言語感覚が楽しい、茅花さんの一連の短歌です。 だからなんだ、というわけではない。 だけど、言わないのはもったいない。 そんな事象が、短歌に変わっています。 日々の折々に目…続きを読む

言い方、ですよね。 なんでも言い方ひとつで面白くなるものです。 本作は現在３話まで投稿されていて、筆者である秋嶋二六さんのご病気の治療のお話を綴られているのです。 感想としては、…続きを読む

故人となった方を偲ぶことは、ご供養になるといいます。 文章に記して残すことは、思いを形にして託すこと。 言葉で語るに余りある感情も言葉でしか記せない。 だから人は、その気持ちを言…続きを読む

日常の生活音。 普通の暮らしの中の音の情景は、在りし日々を思い起こさせるのです。 本作は、作者である五五五 五さんの追想を記したエッセイです。 静かな生活のなかで思い出の中の音が…続きを読む

最後の瞬間に、心が沸き立ちます。 物語とは、こうでなくてはいけない。 物語を追うものは、きっと胸の奥で快哉を叫びます。 本作が描くのは、うだつの上がらない助監督、邦彦の慌ただしい…続きを読む

母の死ぬ夢を見続ける主人公。 そして、二十歳のときに見た夢。 母の死。そしてその翌日、堤防に近い海へ常ならぬ姿のリュウグウノツカイが現れた夢を描いた物語です。 本作では、論理…続きを読む

このエッセイは作者である碧 銀魚さんの行った〝私人逮捕〟の状況と、犯人を捕まえた後に抱いた感慨が書かれています。 悪いことをした人を捕まえる。 なるほど、それは書きたくなる題材で…続きを読む

北欧神話の世界に、異物のように生まれた女神、エリカ。 本作の主人公である彼女は、和装で刀を用いる風変わりな三級神。発明の女神です。 エリカは、異質で低級な存在として、周囲の神々か…続きを読む

従兄弟の忘れ形見の少年が非凡な才能の片鱗を覗かせる物語です。 文化や芸術は、それに携わる個人が亡くなっても世に残ります。 だから死んでも構わないわけではない。 だけど、何かが継…続きを読む

殺害した瞬間に事象の重ね合わせが起きたようです。 主人公は殺した相手が死んでない状態と死んだ状態を同時に体験するのです。 そしてそれは自身にも──── 干渉、もつれ、重ね合わせ…続きを読む

いじめられている少年がその状況を変えるために近所にある人骨粉砕拳の道場で、人骨を粉砕する拳法を学ぶ話。 それだけです。 でもそれがメチャクチャ面白いのです。 必読です。 人骨を…続きを読む