概要
ある日五十嵐記者に届いた、無期懲役犯からの手紙。
その手紙がやがて事件の背後に隠れる、悲しくも激しい怨讐へと繋がっていきます。
今回はホラー要素はなく、純然たるミステリーとして仕上がっています。
結末はとても後味悪くなっておりますので、それも含めてお楽しみ下さい。
おすすめレビュー
新着おすすめレビュー
- ★★★ Excellent!!!冤罪を主張する無期懲役囚……複数の記述から浮かび上がる真実とは?
モキュメンタリーという手法は、ホラーのジャンルで採用されることが多いのですが、実はミステリージャンルとも相性が良いと思うんですよ。というのもミステリーを犯人当てのゲームとして捉えた場合、推理小説が持つ物語的要素がノイズに感じられるケースもあるじゃないですか。しかし、モキュメンタリー形式を採用することで、登場人物の心情描写を最小限に抑えて、客観的な情報だけで謎や伏線を読者に提示できるわけです。
本作では、冤罪を主張する殺人容疑で有罪判決を受けた人物の依頼で、一人の新聞記者が、事件の調査に乗り出します。その際の手がかりとなるのが、事件に関する新聞記事、公判調書、そして事件関係者との取材時の…続きを読む - ★★★ Excellent!!!現代司法の限界に挑む、考察型社会派小説
『私は真嶋聡さんを殺していません』は、ミステリー好きにはたまらない骨太の社会派作品です。何より印象的なのは、主人公・五十嵐慎哉が地道に事件の裏を追い、裁判や証拠の“当たり前”にひとつずつ疑問をぶつけていく姿。彼の記者としての執念や、証言や証拠の不確かさに目を向けるまなざしが、どこまでもリアルで共感できます。
現実の司法制度やSNS社会の矛盾、人間関係の闇も丁寧に描かれ、単なる冤罪ものでは終わらない深みがあります。「正しさって何?」「本当に真実は一つなの?」と、自分のことのように考えさせられるのも魅力です。
謎解きの面白さはもちろん、現代社会の課題に関心がある方や、人の心の機微を味わ…続きを読む - ★★★ Excellent!!!絡まる各人の意図。一人で解けるのか。その逆は、出来るか、許されるか。
作者様は「モキュメンタリーホラーミステリー『廉井徳夫君を探しています』」において重層的な謎の積み重ねを一枚ずつ剥がしていく壮大な物語を著した人です。
その後継となる本作は期待にそぐわぬ重厚さを見せます。
舞台は2020年を跨ぐ神戸市。つまり途中にコロナ禍を含みます。作品の舞台には病床を持つ病院、しかも医療の現場ではなく某裏方の人間模様を数多い現場の一つとして描写します。私達は苦悩したとはいえ医療の裏側は知りません。見えない、というよりリアルタイムで見ることは混乱を招くために許されなかった、その秘密を垣間見ます。
それでも本作の根本は、ヒトコワ。多くの人間の意図が絡まり合う姿は、最初には…続きを読む - ★★★ Excellent!!!この社会のどこかで、こういう出来事が本当に起こっているのかもしれない
なんといっても、この「骨太」で「いぶし銀」な感がたまらなく良いです。
とある冤罪事件を追うことになった新聞記者の五十嵐慎哉。無期懲役となっている遠山久仁彦からの連絡を受け、「真嶋聡」の殺害された事件を洗いなおすことになるが。
本作の特徴は、なんといってもノンフィクションかと見紛うようなリアリティの高さです。
五十嵐が事件を掘り下げる中で、数々の社会的な背景が見えてくる。新型コロナの流行など、記憶に新しい時事的な要素を読み解きつつ、「当時」のことを洗い出していく。
「時代の空気」みたいなものもひしひしと感じられ、これはこの社会のどこかで本当に起きていた出来事なんじゃないかとも思…続きを読む - ★★★ Excellent!!!多分謎は解けないだろう。その修羅に逢う迄は。
これ程の物語を多分誰も読んだ事はない。
そんな予測すら荒唐無稽とは言えない
このミステリーは、前作でも登場した
五十嵐という名の新聞記者が受け取った
一通の 手紙 から全てが始まる。
それは、タイトルにある真嶋聡という
男が殺されて、その容疑者として勾留中の
遠山からの無実を訴える手紙だった。
目眩くトリックと因果関係を糾う、今迄
見た事もない程に複雑なミステリーの
火蓋が切って落とされる。
製薬会社のMRと大学病院医師との軋轢、
過度なノルマやパワハラの温床である
製薬会社の内部事情、殺人犯の家族への
容赦ない中傷、噂話の中の何気ない棘…。
それら負の糸は複雑に何重にも絡み
合…続きを読む