小余綾香

唯、事実を言葉にするのではない膨らみが魅力的でした。 考えても判らないけれども感じる何かをもっと見出したく、一首をいつまでも前にしていたくなります。 私は詩歌の類を理解できない極め…続きを読む

『東京の空は、もっと青いんだって』 ワンフレーズで台詞を発した人の東京への憧れや幻想が伝わって来ます。 この言葉を交わす登場人物の社会は説明が要らない程に。 小説内でそこに触れて…続きを読む

タイトルが良いです。読後に沁みるタイトル。 少しでも長くいられるように遠くの花火大会へ行くのだろうか、と思った私は浅はかでした。 もっと恋の美しさ、切なさが詰まった言葉です。 コ…続きを読む

アレに取りつかれるとは。 なるほど、これは正体が判っても青くなるでしょう。 ですが、短い時を精一杯に舞うアレはその一瞬に作者様に何かを想ったのかもしれません。異類婚姻譚のようでも…続きを読む

老い、介護、死という感情に刺さらずにはおかないテーマ。 だからこそ、歌にすることはとても難しいと存じます。私にはシャウトすることはできても、まどかな声には届き難いものです。 そのつ…続きを読む

とても繊細なタッチの文章にまず惹かれました。 混じりけの少ない澄んだ筆致。会話と「人」の名が２つ、３つ現れる頃には物語のテーマの気配を感じ取れる位に、読み手を敏感にします。 最初の…続きを読む

何気ない一瞬に着眼する素敵さと、それに愛嬌をもたらす言葉選びが面白かったです。
中でもLEDの一首はハッとさせられました。
リズムの小気味よさで楽しく読めるお歌が多いです。

とても日常的な穏やかなストーリー。 それをドラマに変える「恋」の存在。 然もR.B.ブッコローを元にお寺のご本尊！ 『ゆうせか』でのブッコローさんのキャラからは書き難い条件をひら…続きを読む

岡崎令嬢という設定自体がわくわく致しますが、そこからのストーリー展開が更に納得です。 「有隣堂しか知らない世界」を見ていると、くすっ、と、つい笑ってしまう要素が楽しませてくれながら…続きを読む

丁寧にエピソードを描くことで浮かび上がる主人公。その言葉一つ一つから人柄が味わい深く伝わって来ます。 そんな人物が住むに相応しい環境が物語として魅力でした。 職人として生きようとし…続きを読む

北極圏の白や寒気、その世界と澄み方が伝わって来るような文章によって語られるオオカミ。どこか神々しさを感じるような描写です。 そのオオカミと主人公の距離感が近付いて行くストーリーに味…続きを読む

夕焼けのあかね色の含む全てを文字にしたようなお話でした。 鮮やかでありながら一日が終わり行く、闇を連れて来る静かさや切なさがあり、でも、だからこその安らぎや切り替わる契機もあるよう…続きを読む

身近にあり得る状況を巧みに挿し入れたストーリーの設計が、裏稼業という少し感情移入し難い題材を身近に感じさせてくれます。 そして、タイトルにも使われる「色」の演出が効果的でした。 …続きを読む

幻想の美ではありません。 現実の険しさ、歪みさえも壮麗の一部へと吞み込んでしまう凄絶さのあるお作品でした。それは雄大な自然が世界を作り変え続ける営みにも似ています。 これ程、レビ…続きを読む

環境同様、心も荒んで不思議ではない武蔵野。 粋な人間ともののあはれなAIがそこに見出す理想の月が余りにも美しいです。 博士の決断により月が姿を現した時の光明も鮮やかでしたが、その…続きを読む

『序』の二首からはこの様なお話になるとは！ 作者様の柔軟さに感服致しました。 『前編』の独特なロマンを感じるような語り口。それは序で踏まえた内容を味わい深く含みつつ、心地よく耳に…続きを読む

『蔵書を風に曝す』という条件を選ぶ日の出来事。 その環境がストーリーに清やかさを吹き通すのを感じました。 和紙を食む紙魚の様に心に住みかけていた虫と、それが言わせた一言は彼女がそ…続きを読む

夜という日々、経験するものの奥深さを闇の糸、明かりの糸で織り出すような幻想短編集でした。 決して多くを語らないスタイルが世界を飲み込む夜にぴったりですが、「糸」を選りすぐり、他にあ…続きを読む

2021冬の大事件、マ〇クポテトSサイズ限定騒動で、その尊さを認識された（？）ルーサー・バーバンクがサボテンに転生！ それだけでも面白く、更に、女性読者は自宅における「安全」なサボ…続きを読む

『白薔薇』と名付けられた９つのエピソード。 この仕掛けが最後まで効く作品でした。 この９話は言葉よりビジュアルで訴えて来ます。 それは何処かホラー映画での静謐に似て不吉感が漂いま…続きを読む

まず指輪の存在が何とも効いています。 こういう指輪との出会いも確かにある、という気付きがあり、それだけに終わりません。主人公の想いを慮らせるに効果的です。実に感情の伝わる描写。 共…続きを読む

私達は知っています。
千数百年前、古代日本は妻問婚だったことを。
私達は知っています。
アデロバシレウスは産卵で繁殖していたことを。

でも、それを本当に知っていますか？
そして。

「走る」というテーマに直球の運動会。 ……と思うと、中身はユニーク！　独特の競技内容と参加者が面白いです。 そして、それに一所懸命になる登場人物が清々しく、ほっこりします。こんな運…続きを読む

心の感じる儘を歌にするおばあちゃん。 彼女の言葉には虚飾なく、唯々、優しく美しいです。 そして、いつも大事に大事に言葉と向き合っているのが自然と読者に伝わります。 やがて歌を完成…続きを読む

考古学的な角度からの武蔵野だろうか、と頁を開きました。 詳細に描かれる、今。そして調査。 その現実の中に大昔の可能性が潜んでいます。 しかし、それさえも現実とぶつかると儚い存在。 …続きを読む

かってうれしい花いちもんめ まけてくやしい花いちもんめ 欲しがられる人はいつも求められる。 そして、行ったり来たり。 歌と共に子供の情景が蘇りました。 そして「あれって如何した…続きを読む

美しい、唯、ひたすらに美しさを想起させる最初の走行描写。 アダプテッド・スポーツというマイナーに属する競技ジャンル。観たことがない方も多いかもしれません。でも、これを読んだならイメ…続きを読む

アクトノイドに魂を吹き込み、ミカはかりそめの「命」を得る。
そこから始まる人生が如何なるか！
それにしても、近未来の北島●ヤはこうなるのか……なるほど。

読み進めながら不思議な感覚に捉われました。 種々の面白みを追う間に、気付くと小説自体が姿を変えて見えるのです。まるで錯視の様に。一瞬にして想像もしなかった像へ。 仕掛けも語りも遊…続きを読む