未来の『源氏物語』のようでもあり普遍と今風の混ざり方が魅力的

まず冒頭「完璧主義」に対する視点が面白かったです。
物語としてそれを語るのではなく、最初にこれを語るところから如何ストーリーは展開するのだろう、と。
これはラストと結び付き、印象的になる構成で拍手しました。とても丁寧に設計された作品です。

読み進めている時、思い浮かんだのが『源氏物語』。
初恋の理想の人を追う、という古今東西にある求めに、確かにAIという技術的な1つのモデルの提供はあり得ます。それが決して夢物語ではない今なだけにSFより現代ドラマに近い恋愛のお話として楽しめました。
作者様はジャンル選択の感覚が鋭いと存じます。

AIに初期から自然と「心」「意思」を感じるのが魅力の一つ。
それに対する主人公の態度から途中、宇治十帖のような気配にも私には思え、心配になったりしたのですが、この主人公は薫の君より成長する主人公です。安心して読み終えました。

軽やかで気持ち良い読後感でありながら、心の成長、深まり、そして愛するということ等、とてもテーマ性のある内容です。