しっとりとした情感が魅力的です。殺伐とした、即物的な現代的生活感を忘れるのも、良いものですよ。
とても美しかった。淡い淡い雪のような、切なくてだけど妙にリアルで、すぐそばにあるかのようなお話だった。最終話が好きすぎる。しんしんと雪が降る。まるで読む人の心にまで降るみたいだ。ふゆはやっと、自分の気持ちに気づけたんだと思う。素敵な作品に出会えてとても嬉しい。
このレビューは小説のネタバレを含みます。全文を読む(236文字)
とても繊細なタッチの文章にまず惹かれました。混じりけの少ない澄んだ筆致。会話と「人」の名が2つ、3つ現れる頃には物語のテーマの気配を感じ取れる位に、読み手を敏感にします。最初のエピソードは、まるで音叉を聴くようでした。そこに丁寧に少しずつ異なる音色が加わりながら展開するストーリー。登場人物達は調音するように人と繊細に接している、と思います。綺麗な音が遠慮がちに鳴り合う中盤に感じました。そこから自分の音を見出して音楽になるかに盛り上がるラスト、充足感があります。
「切ない」という言葉の意味は日本語以外にないらしいです。そして一言で表せられる日本語に感謝したい。胸が締め付けられる場面があって、またしっかりとした表現が余計に苦しかったです。何が正解かわからないという事実が、どうしようもなく苦しいんです。美しくて、大切にしたいと思いました。