衒いのない二人のまだ柔らか過ぎる翼が心地良い

『東京の空は、もっと青いんだって』
ワンフレーズで台詞を発した人の東京への憧れや幻想が伝わって来ます。
この言葉を交わす登場人物の社会は説明が要らない程に。

小説内でそこに触れていらっしゃらないので作者様は自覚的ではないかと拝察しました。読者の目線が必要以上に逸れず、人物達の輪郭と内面が浮き上がって来て効果的に私は感じます。

それと対になる『これが私にとっての『空色』だったし』という表現もキャラクターが伝わって来て好きでした。

情景を契機に心情に踏み込む描写が互いを効果的に盛り上げる文章が魅力的。

短編全体を想像しやすい始まり方は、同時に「どちらなのだろう」と先が気になるものでもありました。
鳥の色は実際にその色だったのか、そう見えたのか……実は後者で再会した時の「二羽」の色はその時に判るのかもしれない等、想像の膨らむ言葉選びです。