ある冬の日に、岬に一人置き去りにされてしまった幼い「わたし」。寒さに震える中で、勇気づけてもらったのは……。子供の頃の心情をストレートに描かれた前半から、後半への繋がりが美しく、感動に打ち震えました。掬われてよかったと、しみじみ思います。シンプルで、残酷さも含まれている物語だからこそ、心の奥底まで刺さっていくようです。
まず指輪の存在が何とも効いています。こういう指輪との出会いも確かにある、という気付きがあり、それだけに終わりません。主人公の想いを慮らせるに効果的です。実に感情の伝わる描写。共感、支え、少しの重荷、そして……という月日が背後に見えました。