ディストピアを照らす月

環境同様、心も荒んで不思議ではない武蔵野。
粋な人間ともののあはれなAIがそこに見出す理想の月が余りにも美しいです。

博士の決断により月が姿を現した時の光明も鮮やかでしたが、その時間が儚く過ぎてしまった後、ディストピアに芽生えた月を想う心は彼等の背負う未来を支える光にも思えました。月を見る経験が管理側であるAIの何かを確かに変えたのを感じます。
限りある命の人と人にメンテナンスされて命繋ぐAI。共に月を再び見てほしいと願うと同時に、仮にどちらかがより長く課題に向き合うことになったとしても、この歌は残された側にとって明かりになり得るでしょう。
AIを慈しむ人と人を慮るAIの究極の思いやりは、気が遠くなるようなミッションを月のように光量を変えながら照らしてくれる、と希望を感じました。

歌の味わいも素敵です。

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