第48話 開業への第一歩

「つながりカレー」のお披露目会から数日後、唯はカレーショップを本格的に開くための準備を始めることにした。おばあちゃんやみなみ、佐倉さん、そして子どもたちからの応援が、唯の背中を強く押してくれていた。


「唯ちゃんのお店、どんな場所にするの?」とみなみが聞くと、唯は少し考えてから答えた。


「小さい頃から子ども食堂みたいに、誰でも気軽に来られて、安心できる場所にしたい。子どもも大人も笑顔で過ごせるお店。カレーが好きな人はもちろん、自分の居場所を見つけたい人が集まれるような場所を作りたいんだ」


その言葉にみなみは「絶対に素敵なお店になるよ!」と目を輝かせた。


おばあちゃんも、「唯ちゃんが大切にしてきた『つながり』を、もっと広げる場所になるわね。何か困ったことがあったら、いつでも頼ってね」と優しく励ました。


佐倉さんは、唯にお店作りのアドバイスをしてくれた。「まずは場所探しだね。お店のコンセプトに合った場所を見つけることが大切だよ。それと、お店の運営に必要な準備も一緒に考えよう」


唯はその言葉に力強く頷いた。「ありがとうございます!頑張って理想のお店を作ります!」


数週間後、唯は佐倉さんの紹介で、地域の商店街にある小さな空き店舗を見に行くことになった。その場所は、古びてはいたが温かみのある雰囲気を持っていて、窓からは柔らかな日差しが差し込んでいた。


「ここなら、みんなが気軽に立ち寄れるお店になりそう」と唯は直感的に感じた。


店舗のオーナーは、かつてここで喫茶店を営んでいた高齢の女性だった。唯の話を聞きながら、「私もこの場所で、たくさんの人とつながる時間を楽しんできました。あなたなら、この場所をもっと素敵な空間にしてくれる気がします」と快く貸してくれることになった。


店舗を借りる契約が成立した後、唯は子ども食堂のみんなにその報告をした。


「お店の場所が決まりました!小さくてかわいいお店なんです。これからみんなで準備を進めていきたいと思います」


その言葉に、みなみや子どもたちは「私も手伝う!」「お店の飾り付けをやりたい!」と大喜びで協力を申し出た。


お店の改装作業が始まると、食堂で一緒にカレーを作ってきた仲間たちも手伝いに来てくれた。壁にカレーのスパイスをイメージした絵を描いたり、温かみのある照明を取り付けたりと、少しずつお店が形になっていった。


「お店の名前はどうするの?」とみなみが聞くと、唯は「『つながりカレー』をそのまま店名にしようと思う。このお店が、私のカレーでたくさんの人をつなぐ場所になってほしいから」と答えた。


ついにお店が完成した日、唯は改装を手伝ってくれたみんなを招いてプレオープンパーティを開いた。看板には「つながりカレー」と書かれ、その下には手描きで「笑顔が集まる場所」と添えられていた。


「唯ちゃん、本当におめでとう!」とみなみが声を上げると、他の子どもたちや大人たちも拍手で祝福してくれた。


おばあちゃんは唯の肩に手を置き、「唯ちゃん、ここがあなたの新しい物語の始まりね。あなたがこれまで築いてきたつながりが、このお店をもっと素晴らしい場所にしてくれるわ」と語りかけた。


その夜、唯は布団に入ってから静かに考えた。


「このお店で、たくさんの人と出会って、笑顔になれる場所を作りたい。カレーを通じて、もっと多くの人をつないでいこう」


新しい挑戦のスタートラインに立った唯。彼女の「つながりカレー」は、これからさらに大きな輪を広げ、多くの人々に温かさを届けていく。


カレーでつながる物語は、新たな章を迎え、さらに深く、さらに広く広がっていくのだった。

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