第45話 カレーで夢を語る夜
スパイス教室が成功を収めた翌日、唯は食堂で片付けをしながら、一つの目標が心の中に芽生えていることを感じていた。それは、もっと多くの人にスパイスとカレーの魅力を伝えるために、自分のカレーショップを持つことだった。
「おばあちゃんみたいに、誰でも気軽に来られて、温かい気持ちになれる場所を作りたいな…」
そんな思いを抱えたまま、唯はみなみに話しかけた。
「みなみちゃん、私、いつか自分のお店を持ちたいんだ」
その言葉にみなみは目を輝かせ、「それ、絶対に素敵だよ!唯ちゃんのお店なら、みんな笑顔になるよ」と即座に答えた。
「でも、まだまだスパイスの勉強も足りないし、どうやってお店を始めたらいいかも分からなくて…」と唯は不安を口にした。
「それなら、みんなで考えればいいんじゃない?」とみなみは屈託のない笑顔を見せた。
「みんなで…?」唯はその言葉にハッとした。これまでのカレー作りは、常に仲間と一緒だったことを思い出した。
その日の夜、子ども食堂で唯の「カレーショップの夢を語る会」が開かれた。みなみやおばあちゃん、佐倉さん、そして子どもたちも集まり、食堂はにぎやかな雰囲気に包まれた。
「唯ちゃんのお店、どんな場所にするの?」とみなみが聞くと、唯は少し考えてから答えた。
「みんなが自由に来られる場所にしたいんだ。大人も子どもも、一人でも家族でも、カレーを食べながらゆっくりできる場所。あとは…自分でカレーを作ってみたい人が体験できるスペースも作りたいな」
その言葉に、みなみが「それ、私が絶対に行きたいお店だ!」と笑い、子どもたちも「僕もカレー作りたい!」と声を上げた。
佐倉さんも「君が学んだスパイスの魅力を、そういう形で伝えるのは素晴らしいね。僕も応援するよ」と背中を押してくれた。
夢を語るうちに、唯の中で未来のイメージが少しずつ形になっていった。そして、集まったみんなからの提案や応援の言葉が、彼女の決意をさらに強くした。
「まずは、自分だけのオリジナルカレーを完成させるところから始めたい。そのカレーを、お店の看板メニューにするんだ」
その言葉におばあちゃんが優しく頷き、「唯ちゃん、それがあなたの一歩ね。大きな夢でも、一つずつ階段を上っていけば必ず叶えられるわよ」と励ました。
その夜、唯は布団に入るとき、胸がいっぱいになっているのを感じた。
「私のカレーが、もっと多くの人に届く場所を作りたい。みんなが集まって、笑顔になれる場所を」
その夢は、まだ形になっていなかったが、唯の心には確かな輝きとして灯っていた。
カレーでつながる物語は、新たなステージを迎えようとしていた。唯の夢は、スパイスの香りとともにさらに広がり、これからも多くの人を笑顔にしていくに違いない。
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