第31話 スパイスの旅

新しい夢に向かって、唯の毎日はさらに忙しくなっていった。図書館でスパイスや料理に関する本を読み込むだけでなく、家で試作を繰り返し、子ども食堂で子どもたちと新しいカレーを作る日々を送っていた。


そんなある日、唯は図書館で一冊の本を手に取った。それは「スパイスの秘密」と題された分厚い本で、各地のスパイスの特徴や、それを使った料理の歴史が詳しく書かれていた。ページをめくるたびに、唯の好奇心は刺激され、「もっとスパイスについて知りたい」という気持ちが強くなっていった。


その夜、唯は布団の中で考えた。「スパイスの本当の使い方や、もっとたくさんのカレーを知るにはどうすればいいんだろう?このまま本を読むだけじゃなくて、実際に学びに行けたら…」


翌日、子ども食堂でおばあちゃんにその思いを話した。「おばあちゃん、私、スパイスについてもっと深く学びたいです。どこかで教えてもらえる場所はないかな?」


おばあちゃんは少し考え込んだ後、微笑んだ。「そうね、私の知り合いにスパイスを専門に扱っているお店をやっている人がいるわ。その人に話してみたら、何か手助けしてくれるかもしれないわね」


唯はその提案に目を輝かせ、「本当ですか?ぜひ行ってみたいです!」と答えた。


翌週、おばあちゃんに紹介されたスパイス専門店「香りの旅路」を訪れた唯は、店主の佐倉さんという中年の男性に迎えられた。彼は長年スパイスの仕入れや調合を行い、料理教室も開いている人物だった。


「おばあちゃんから話は聞いているよ。君がカレーに夢中になっているってね。ここではスパイスの基本から応用まで教えることができるよ」と佐倉さんが温かく声をかけてくれた。


唯は緊張しながらも、「お願いします!もっとスパイスについて学びたいんです」と頭を下げた。


その日から、唯は「香りの旅路」でスパイスの基礎を学ぶことになった。最初の授業では、各種スパイスの香りや味を一つずつ確認することから始まった。


「このクミンの香りを嗅いでみて」と佐倉さんが瓶を差し出すと、唯は深く吸い込み、「あ、これ、カレーを作るときの香り!」と気づいた。


「そう、クミンはカレーのベースになるスパイスの一つだ。でも、使い方次第で味わいが大きく変わるんだよ」と佐倉さんは丁寧に説明してくれた。


授業が進むにつれ、唯はカルダモンの爽やかさや、ターメリックの色彩効果、ガラムマサラの調合による香りの変化など、スパイスの奥深さにどんどん引き込まれていった。


その夜、唯は子ども食堂でみなみやおばあちゃんにその日の学びを熱心に話した。「スパイスって本当に面白いんです!ちょっとした使い方で全然味が変わるんですよ!」


みなみはその話に興味津々で、「じゃあ今度、一緒に新しいスパイスを使ったカレーを作ろうよ!」と提案した。


おばあちゃんも微笑みながら、「唯ちゃん、これからスパイスの世界を探求していくのね。きっとその経験が、あなたのカレーをもっと特別なものにしてくれるわ」と励ました。


唯は、自分が学んだことを生かして新しいカレーを作る日が待ち遠しくなった。そして、スパイスの旅はまだ始まったばかりだと感じながら、心を弾ませた。


新しい知識、新しい挑戦、そして新しい味――唯の未来はスパイスとともに広がっていくのだった。

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