第30話 新たな夢の始まり
学校での特製カレーランチが大成功を収めた翌日、唯はこれまでの出来事を振り返りながら、カレーが自分にとって特別な意味を持つようになったことを改めて感じていた。自分が作るカレーが誰かを笑顔にし、つながりを生む。その喜びが彼女の心を満たし、新たな目標を見つけるきっかけとなった。
その日、子ども食堂でおばあちゃんが唯に声をかけた。「唯ちゃん、あなた、これからどうしたいか考えたことはある?」
唯は一瞬戸惑いながらも、「私、もっとたくさんの人にカレーを届けたいです。おばあちゃんみたいに、カレーで人をつなげる場所を作りたい」と答えた。
おばあちゃんはその言葉に優しく微笑みながら、「それは素敵な夢ね。でもね、夢を叶えるにはまず小さな一歩から始めることが大切なのよ。唯ちゃんにとって、その一歩は何かしら?」と問いかけた。
唯は少し考えてから、「もっとカレーのことを知りたいです。スパイスのことや、いろんな国のカレーを学んで、自分だけのカレーを作れるようになりたい」と答えた。
おばあちゃんは頷き、「それなら、私が知っている限りのことを教えてあげるわ。それから、図書館に行ってスパイスや料理の本を探してみるのもいいかもしれないわね」と提案してくれた。
その言葉を受けて、唯はさっそく行動に移した。図書館に通い始め、スパイスや世界各地のカレーについて調べる日々が始まった。カレーの歴史や文化、スパイスの効能について学ぶ中で、唯の視野はどんどん広がっていった。
また、子ども食堂では「今日はインド風のカレーを作ってみよう」とか、「次はタイのグリーンカレーに挑戦しよう」と、さまざまな国のカレー作りに挑戦した。そのたびに、子どもたちは新しい味に驚きながら喜んでくれた。
みなみも積極的に手伝いをするようになり、「私も将来、カレーでお店をやりたい!」と言うほどカレー作りに夢中になっていた。
ある日、唯はおばあちゃんに、「私、いつか自分のカレーを作るお店を開きたいです。子ども食堂みたいに、誰でも来られる場所を作って、いろんな人とカレーを通じてつながりたい」と話した。
おばあちゃんはその夢を聞いて、深く頷きながら言った。「唯ちゃん、それは素晴らしい夢ね。でも、その夢を叶えるためには、何よりも『続けること』が大切よ。これからも、自分のペースで進んでいけばいいのよ」
唯はその言葉に力をもらい、「はい、頑張ります!」と力強く答えた。
そして、子ども食堂の最後のカレーを盛り付けながら、唯は自分の未来を思い描いた。カレー作りを通じて学んだことや、出会った人々とのつながりが、これからの彼女を支えてくれるという確信があった。
「次はどんなカレーを作ろうかな?」と心を弾ませながら、唯はみなみやおばあちゃんとともに、食堂を後にした。
この日、唯の新たな夢が始まった。カレーでつながる世界をもっと広げていくために、小さな一歩を大切にしながら歩んでいく――その決意を胸に抱いて。
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