第37話 カレーに込める感謝
「スパイスでつなぐ心カレー」が大成功を収めた翌日、唯は食材を提供してくれた農家の人々に感謝を伝えたいという思いを抱いていた。田島さんやレンコンを育てる夫婦が、自分たちの食材を大切に育てる話を聞いたことで、唯はその努力にもっと報いる方法を考えたかったのだ。
「カレーを食べてもらうのが一番の感謝になるかもしれないね」と、子ども食堂で話していると、みなみが「それなら、私たちが作ったカレーを届けに行こうよ!」と提案した。
唯はそのアイデアに目を輝かせ、「それ、いいかもしれない!でも、せっかくならもっと特別なカレーにしたいな」と答えた。
早速、唯たちは新しいカレーの試作に取り掛かった。テーマは「感謝を伝えるカレー」。食材の魅力を最大限に引き出すために、佐倉さんにも相談しながらレシピを考えた。
「サツマイモの甘みをより引き立てるために、ハチミツを少し加えてみたらどうかな?」と佐倉さんが提案し、唯は「それ、きっと優しい味になりますね!」と頷いた。
また、レンコンには軽く素揚げを加えることで、食感をより際立たせることに決めた。「シャキシャキだけじゃなくて、少し香ばしさも足したら面白くなりそう」とみなみが言い、それを採用することにした。
さらに、カレーのベースには、唯が最近学んだばかりの自家製スパイスペーストを使用することにした。このペーストにはクミン、ターメリック、コリアンダーを絶妙なバランスで調合し、深い香りと風味を加えていた。
完成した「感謝のカレー」を手に、唯とみなみは田島さんの家を訪れた。田島さんは唯たちの訪問に驚きながらも、「こんなに立派なカレーを作ってくれたの?」と目を輝かせた。
「このサツマイモがあったからこそできたカレーです。本当にありがとうございます」と唯が頭を下げると、田島さんは少し涙ぐみながら「そんなふうに言ってもらえるなんて、作ってきてよかったわ」と答えた。
次に訪れたのは、レンコンを育てている夫婦の家だった。レンコンの素揚げをトッピングしたカレーを手渡すと、夫婦は「うちのレンコンがこんな形になるなんて思わなかった!子どもたちも喜んでくれるのが嬉しいね」と感激していた。
その場で一緒にカレーを食べると、夫婦は何度も「おいしい!」と笑顔を見せてくれた。その光景に唯は胸がいっぱいになった。
その日の帰り道、みなみが唯に話しかけた。「唯ちゃん、今日みたいに誰かに感謝を伝えられるカレーって、すごく素敵だね」
唯は頷きながら答えた。「私たちが作ったカレーが、農家さんたちの努力を少しでも伝えられたなら、それが一番嬉しいよね」
おばあちゃんにその話を報告すると、彼女は優しく微笑みながら言った。「唯ちゃん、あなたのカレーはどんどん人をつなげているわね。その感謝の気持ちが、きっとみんなの心にも届いているわ」
その夜、唯は布団の中で静かに考えていた。「これからも、カレーを通じてたくさんの人に感謝を伝えられるような料理を作りたい。そのために、もっと学んで、もっと工夫を重ねていこう」
スパイス、食材、そして人々の思い――それらが一つに溶け合い、唯のカレーは新たな広がりを見せていた。
感謝を込めたカレーの物語。それは、唯のカレー作りが次のステージへ進むための大切な一歩となったのだった。
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