第28話 みなみの挑戦

おばあちゃんの秘密レシピを教えてもらった唯は、カレー作りへの思いをさらに強くしていた。おばあちゃんから受け継いだ「誰かを思う気持ちが味を作る」という教えが、唯の胸に深く刻まれていた。そして、その思いをみなみにも伝えたいと考えていた。


次の子ども食堂の日、唯は調理の準備をしているみなみに声をかけた。


「みなみちゃん、今日はみなみちゃんの好きなカレーを一から作ってみない?」


みなみは驚いたように目を丸くした。「えっ、私が一から作るの?できるかな…」


「大丈夫だよ。私もおばあちゃんに教えてもらったとき、最初は何もできなかったけど、少しずつ覚えていったから。今日はみなみちゃんのカレーをみんなに届けよう!」


その言葉に、みなみは少し不安そうにしながらも頷いた。「…じゃあ、やってみる!」


唯とおばあちゃんは、みなみが好きな材料やスパイスを選ぶところからサポートした。みなみは慎重にスパイスを選びながら、「お父さんが好きな味にしたい」と呟いた。


「そしたら、甘みとちょっとだけ辛みを効かせてみようか。お父さんが驚くくらいおいしいカレーにしよう!」と唯が提案すると、みなみは目を輝かせた。


調理が始まり、みなみは真剣な表情で野菜を切り、スパイスを計り、鍋の中で丁寧に混ぜていった。最初は不安そうだった手つきも、少しずつ自信に満ちたものになっていった。


「これでいいのかな?」とスパイスを加えた鍋をかき混ぜながら、みなみが唯に尋ねた。


「うん、いい香りがしてきたよ!みなみちゃんのカレー、絶対おいしくなるよ」と唯が笑顔で答えると、みなみは少し照れくさそうに微笑んだ。


カレーが完成すると、みなみは試食をする前に緊張した面持ちでスプーンを手に取った。一口食べた瞬間、彼女の顔に笑みが広がった。


「おいしい…!これ、私が作ったの?」みなみは驚きの声を上げた。


「そうだよ、みなみちゃんが作ったんだよ。お父さんにも喜んでもらえる味だね」と唯が言うと、みなみは嬉しそうに「次は家でも作ってみる!」と答えた。


その日の子ども食堂で、みなみの作ったカレーが振る舞われた。子どもたちは一口食べると、「これ、すごくおいしい!」「優しい味がするね」と口々に感想を言い、みなみのカレーを絶賛した。


みなみはその様子を見ながら、目に涙を浮かべて唯に言った。「私、料理なんてできないと思ってたけど、唯ちゃんやおばあちゃんが教えてくれたから、自信が持てた。ありがとう!」


唯はその言葉に胸が熱くなり、みなみの肩に手を置きながら「みなみちゃんの気持ちが、みんなに届いたんだよ」と優しく言った。


その帰り道、みなみは「次はもっとおいしいカレーを作りたい」と意気込んで話していた。唯は、みなみの挑戦がまた一つ成功に結びついたことを嬉しく思い、自分ももっと頑張ろうと心に誓った。


みなみのカレーは、新しい絆を生み出すとともに、料理を通じて心をつなぐ力を再確認させてくれる出来事となった。そして唯は、このつながりがもっと広がる未来を楽しみに感じていたのだった。

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