第42話 スパイスの未来

イベントの成功から数週間後、唯はこれまで以上にカレー作りへの情熱を抱いていた。自分が作るカレーが、人々をつなぎ、笑顔を生む――その実感が、彼女に新たな目標を与えた。


「もっと多くの人にスパイスの魅力を伝えたい。そして、みんなが自分だけのカレーを作れるようになったら素敵だな」


そんな思いを抱きながら、唯は佐倉さんの元を訪れた。


「佐倉さん、私、スパイスのことをもっと深く学びたいんです。そして、それをいろんな人に伝えられるようになりたい」


佐倉さんはその言葉に頷き、「唯ちゃん、君がそう言うと思って、新しい提案を用意しておいたんだ」と微笑んだ。


「提案…ですか?」唯は驚きつつも期待を込めて尋ねた。


「スパイスの産地を訪ねてみないかい?インドやスリランカ、タイなど、スパイスの文化が根付いている国々を回ることで、君のカレー作りにさらに深みが出ると思うよ」


唯はその提案に目を輝かせた。「スパイスの産地…実際に行けるんですか?」


「もちろん。ただ、旅には覚悟が必要だよ。現地の文化や料理を学ぶだけでなく、君自身が新しい挑戦を続けることになるからね」


唯は少し考えた後、決意を込めて頷いた。「やってみます!スパイスの本場を見て、自分のカレーをもっと成長させたいです!」


その夜、唯は子ども食堂でおばあちゃんとみなみにその話を伝えた。


「私、スパイスの産地に行ってもっと勉強してきます。もっとたくさんのことを学んで、帰ってきたらみんなにその知識をシェアしたいんです」


みなみは少し寂しそうにしながらも、「唯ちゃん、すごいね。私も一緒に行きたいくらいだよ。でも、帰ってきたらたくさん教えてね」と笑顔で言った。


おばあちゃんも温かく見守りながら、「唯ちゃん、あなたがこれまで築いてきたつながりは、この旅が終わっても消えないわ。むしろ、もっと大きな輪になって戻ってくると思う」と励ました。


数週間後、唯はスパイスの旅に出発した。最初に訪れたのはインドのスパイス市場だった。そこには色とりどりのスパイスが山のように積まれ、カレーの文化が息づく活気に満ちた場所だった。


市場で出会った地元の女性が、カレー作りの手順を丁寧に教えてくれた。「私たちのカレーは、家族のために作るもの。スパイスを使うときは、家族の好みに合わせて調整するのよ」と語るその姿に、唯は感銘を受けた。


次に訪れたスリランカでは、カレーリーフの香りが立ち込める食堂で、現地の人々と一緒にカレーを作る機会に恵まれた。「スパイスは自然の贈り物。だからこそ丁寧に扱うんだ」と教わり、その考え方が唯の心に深く刻まれた。


旅を通じて、唯はスパイスとカレーが人々の生活にどれほど密接に結びついているかを学び、その奥深さに触れるたびに、自分のカレー作りへの思いが強くなっていった。


帰国した唯は、子ども食堂でみなみやおばあちゃん、そして子どもたちにスパイスの旅で学んだことを熱心に語った。


「現地ではね、家族や友達と一緒にカレーを作ることが当たり前なんだって。それが人々をつなげているのがすごく素敵だった」


みなみは「唯ちゃん、その話もっと聞きたい!」と目を輝かせ、おばあちゃんは「唯ちゃん、これであなたのカレーはさらに輝きを増したわね」と微笑んだ。


その日の夜、唯は静かに思った。「スパイスの旅で学んだことを生かして、もっとたくさんの人をカレーで笑顔にしたい。そして、私だけのカレーを作り上げたい」


新たな知識と経験を手に入れた唯の物語は、さらに深く広がっていく。


スパイスの未来を切り開き、カレーで世界をつなぐ旅は、これからも続いていくのだった。

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