第43話 スパイスの旅から戻って

スパイスの本場を巡る旅を終えた唯は、子ども食堂に戻ったとき、みんなが歓迎してくれる笑顔に胸が熱くなった。みなみが「唯ちゃん、おかえり!スパイスの旅はどうだった?」と興奮気味に聞いてきた。


「ただいま、みなみちゃん。すごく勉強になったよ。スパイスの香りや味だけじゃなくて、それを作る人たちの思いや、カレーが人々の生活にどう根付いているかも学んできたんだ」と唯は答えた。


「早くその話を聞きたい!それに、唯ちゃんの新しいカレーも食べたい!」とみなみは目を輝かせた。


唯は微笑みながら「もちろん。今日は旅で学んできたことを詰め込んだ特別なカレーを作るから、みんなで手伝ってね」と答えた。


唯が提案したのは「旅の記憶カレー」。インド、スリランカ、タイで学んだスパイスの使い方や現地の味わいを一皿にまとめる特別なカレーだ。


調理が始まると、唯はまずスリランカで教わったカレーリーフを鍋に入れ、香りを引き出すところから始めた。「このカレーリーフを炒めると、一気にカレーの香りが広がるんだよ」と説明すると、子どもたちは「いい匂い!」と歓声を上げた。


次に、インドで学んだガラムマサラを使い、深い香りを加えていった。「ガラムマサラは最後に入れることで香りを活かせるの」と唯が話すと、みなみが「そんなテクニックもあるんだね」と感心していた。


最後に、タイで学んだココナッツミルクを加え、まろやかでクリーミーな仕上がりに。唯が「これで完成!」と宣言すると、鍋の中から漂う香りに子どもたちは期待に胸を膨らませた。


試食の時間になると、子どもたちはスプーンを手に取り、一口食べて感動の声を上げた。


「これ、すごくおいしい!」「スパイスが香ってるのに辛すぎなくて優しい味!」と次々に感想が飛び交い、みなみも「唯ちゃん、旅で学んだことが全部詰まってるね」と感動していた。


おばあちゃんも一口食べ、「唯ちゃん、このカレーはまさにあなたの旅の物語ね。スパイスの味だけじゃなくて、あなたが出会った人々の思いが伝わってくるわ」と微笑んだ。


その夜、唯は布団の中で静かに思った。スパイスを学び、異国の文化や人々と触れ合ったことで、自分のカレーに込める思いがさらに深くなったことを感じていた。


「スパイスがつなぐ物語は、本当に尽きないんだな。そして、私がそれをもっとたくさんの人に伝えていきたい」


唯の新しいカレー作りの旅は始まったばかりだ。スパイスを通じて広がる笑顔の輪は、これからももっと多くの人々を包み込んでいくだろう。


スパイスの旅から戻った唯の物語は、さらに彩りを増しながら、次の章へと進んでいくのだった。

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