第25話 ポテトサラダカレー
みなみが「ポテトサラダをもう一度作ってみたい」と話してから数日後、唯は次の子ども食堂でその夢を一緒に叶えようと心に決めていた。みなみが抱えていた「お父さんに認められなかった」という思いは、唯の胸に深く響いていた。自分もずっと誰かに認められたいと願ってきたからだ。
食堂に到着したみなみは、どこか少し緊張した表情をしていた。「今日、本当にポテトサラダ作れるかな…」と、不安そうに呟いた。
唯はそんなみなみを励ますように笑顔を見せ、「大丈夫だよ、私も一緒に作るから」と元気よく声をかけた。
おばあちゃんも調理台の横で、「ポテトサラダをカレーと組み合わせるなんて面白い発想ね。きっとみんな喜んでくれるわ」と優しく背中を押してくれた。
調理が始まり、みなみは慎重にジャガイモを茹で、包丁で具材を細かく刻んでいった。唯が「ポテトサラダはね、味付けでちょっと冒険してもいいんだよ」と言い、少しだけおばあちゃんのアドバイスを受けながら、スパイスを隠し味に使う提案をした。
みなみは「スパイスをポテトサラダに?」と驚きながらも、唯が差し出したクミンや少量のカレー粉を恐る恐る混ぜてみた。
「いい匂いがする!」とみなみが嬉しそうに言いながら味見をすると、ポテトサラダにスパイスの風味が加わり、いつもとは違った深みのある味に仕上がった。
「おいしいよ、これ!」唯も一口食べて感動の声を上げた。
ポテトサラダが完成した後、それをカレーと一緒に盛り付け、食堂のテーブルに運んだ。ジャガイモのクリーミーなポテトサラダと、スパイスの効いたカレーが一皿に並ぶと、見た目も鮮やかで食欲をそそる仕上がりになった。
子どもたちが次々にスプーンを手に取り、口に運ぶと、「これすごくおいしい!」「ポテトサラダとカレーって合うんだね!」と歓声が上がった。
みなみはその様子を見て、目を輝かせながら唯に話しかけた。「みんなが食べてくれてる…しかも、おいしいって言ってくれてる…」
唯はその言葉に頷きながら、「でしょ?みなみちゃんが作ったポテトサラダだからだよ」と優しく言った。
調理を終えた後、みなみはポテトサラダの残りをお弁当箱に詰め、お父さんに持って帰ると言った。「今日作ったこれ、お父さんに食べてもらおうかな。次は、褒めてもらえるかもしれない」
その言葉に、唯もおばあちゃんも笑顔を浮かべ、「絶対に喜んでくれるわよ」と励ました。
その夜、唯は布団の中で、みなみの笑顔を思い出していた。料理はただの食事を作るだけではなく、誰かの心を動かし、つながりを生むものだと改めて感じた。そして、これからもみなみと一緒にカレー作りを楽しみながら、たくさんの人を笑顔にしていきたいと思った。
「次はどんなカレーを作ろうかな…」そう考えると、唯の心はわくわくでいっぱいになったのだった。
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