第47話 カレーの名前

オリジナルカレーが完成し、唯は胸を弾ませながら食堂のみんなに提案した。


「このカレーをお店の看板メニューにしたいんです。でも、特別な名前をつけたいと思っていて…みんな、一緒に考えてくれませんか?」


その言葉に、みなみや子どもたちは大喜びで手を挙げた。「私も考える!」「どんな名前がいいかな?」と、さっそく賑やかな議論が始まった。


「優しい味だから『やさしさカレー』はどう?」

「スパイスがたくさん入ってるから『スパイス物語』とか!」

「お店の名前に合わせて『唯ちゃんカレー』もいいかも!」


次々にアイデアが飛び出す中で、唯は「どれも素敵だけど、もっとこのカレーに込めた思いを伝えられる名前がいいな」と微笑みながら考え込んでいた。


その夜、唯はひとりでキッチンに立ちながら、このカレーに込めた自分の思いを振り返っていた。


「このカレーには、私が出会ったたくさんの人たちの思いが詰まっている。おばあちゃんやみなみ、スパイスの旅で出会った人々…そして、私自身がカレーを通じて見つけたつながり。それをどうやって名前に込めたらいいんだろう?」


ふと、唯はスパイスの旅で出会ったスリランカの食堂の言葉を思い出した。「カレーは人をつなぐ料理」という言葉が、胸の奥に蘇った。


次の日、唯はみなみやおばあちゃん、佐倉さん、そして子どもたちに提案した。


「このカレーの名前を『つながりカレー』にしようと思います。このカレーには、私が出会った人たちとのつながり、そしてこの食堂でみんなと作り上げたつながりが詰まっているから」


その言葉に、みなみは「いい名前だね!唯ちゃんらしいよ」と嬉しそうに頷き、子どもたちも「すごくぴったり!」と賛成してくれた。


おばあちゃんは唯を見つめながら、「唯ちゃん、あなたが築いてきたつながりがこのカレーに込められているのね。この名前を聞くだけで、みんなが心温まるわ」と優しく微笑んだ。


数日後、唯は「つながりカレー」を正式にお店の看板メニューとして発表することを決めた。子ども食堂で試作を重ね、改良を加えながら、より多くの人に喜んでもらえる味を追求した。


その過程で、みなみや子どもたち、そして地域の人々が何度も試食に協力してくれた。「もう少し甘さを加えたら子どもも食べやすいよ」「このスパイスの香り、すごくいいね!」という意見が、カレーをさらに進化させていった。


看板メニューの完成を記念して、子ども食堂で「つながりカレーのお披露目会」が開催された。食堂には、これまで唯を支えてきた人たちが集まり、スパイスの香りに包まれる中で笑顔が溢れていた。


「唯ちゃん、このカレー、私たちの思い出が全部詰まってるね」とみなみが言うと、唯は深く頷きながら答えた。


「うん。このカレーが、これからももっとたくさんの人をつないでいけるように、私はもっと頑張りたい」


その夜、唯は布団の中で静かに思った。


「『つながりカレー』は、私の物語の始まり。そして、これをきっかけにもっと多くの人とつながっていきたい」


カレーで広がるつながりの輪。それは、唯の夢をさらに大きくし、新たな未来を切り開く力となっていく。


彼女の物語は、まだまだ続いていく。スパイスとカレーの香りが、これからも新しい出会いを運んでくれるだろう。

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