第35話 地域の味とスパイス
穂香との出会いから数日後、唯は地域の味を取り入れたカレー作りに挑戦することを決めた。穂香が話してくれた「地元の食材をスパイスと組み合わせる」というアイデアにすっかり魅了され、早速子ども食堂の次回メニューに新しいカレーを提案した。
「おばあちゃん、みなみちゃん、次は地元で採れた野菜や特産品を使ってカレーを作ってみませんか?」
その提案に、みなみは目を輝かせて「面白そう!どんな食材を使うの?」と聞いた。
「それを今から探しに行こうと思ってるの。市場に行けば、きっといいものが見つかるはず」と唯は笑顔で答えた。
その日、唯とみなみ、そして穂香の三人で地域の市場を訪れた。市場には地元の農家が持ち寄った新鮮な野菜や果物、手作りの加工品が並んでいて、どれも魅力的だった。
唯が一つのカゴに目を留めると、そこには「地元特産の甘いサツマイモ」と書かれていた。手に取ると、ほのかな甘い香りがして、思わず「これ、カレーに使えそう」と呟いた。
穂香がそれを聞いて、「サツマイモなら、スパイスの辛みと甘みが絶妙に合うと思うよ。それにココナッツミルクを合わせれば、まろやかな味になりそう」とアドバイスしてくれた。
さらに、みなみが「このレンコンもいいかも!シャキシャキしてて食感が楽しいから、カレーに入れたら面白そう」と提案し、唯はその意見に頷いた。
こうして、サツマイモ、レンコン、そして地元産のニンジンを使った「地域の味カレー」を作ることが決まった。
子ども食堂に戻り、早速調理が始まった。唯は穂香に教わりながら、スパイスの調合を少し変えてみることにした。サツマイモの甘さを引き立てるために、カルダモンとシナモンを多めに使い、ココナッツミルクでまろやかさを加える。
みなみは丁寧にレンコンを薄くスライスし、「カレーにシャキシャキ感を残したい」と話しながら楽しそうに作業をしていた。
調理が進むにつれ、鍋からはスパイスと野菜の香りが立ち上り、食堂全体を包み込んだ。
「これ、本当にいい匂い!早く食べたい!」とみなみが声を上げると、穂香も「これは絶対においしくなる予感がするね」と笑った。
完成したカレーを子どもたちに振る舞うと、「これ、サツマイモが甘くておいしい!」「レンコンのシャキシャキが面白い!」と、嬉しい感想が次々に飛び交った。
子どもたちの笑顔を見た唯は、胸がじんわりと温かくなるのを感じた。「地元の味を取り入れるだけで、こんなにみんなが喜んでくれるなんて」とつぶやくと、穂香が頷きながら言った。
「唯ちゃんのカレーが、地元の人たちをもっと笑顔にしてくれるきっかけになるかもしれないね。このカレーも、地域の物語の一部になっていくと思うよ」
その言葉に、唯は深く頷いた。
その夜、唯はおばあちゃんに報告した。「今日、地元の食材を使ったカレーが大成功でした。スパイスと地域の味を組み合わせるって、こんなにも新しい発見があるんですね」
おばあちゃんは微笑みながら、「唯ちゃん、あなたのカレーはどんどん広がりを見せているわね。これからも、いろんな人とつながりながら新しい味を作っていってね」と優しく励ました。
唯は、その言葉に力をもらいながら、次はどんな地元の味をカレーに取り入れるかを考え始めた。
地域の味とスパイスが紡ぐ新しい物語。唯のカレー作りは、これからも広がり続けていくのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます