第31話
「ええ、もちろん食糧事情、バルサク宇宙帝国がなんとかします!」
聴衆の前で演説する元老院議員デスペラード、シーザーは怒りの休暇を続行している中遊説に駆り出されているベテラン議員だ。
「皆様の食卓は彩りを増やすことになるでしょう、サラダ!ステーキ、パン!何でも食べたいものを食べましょう!人口を増やしてください!宇宙は広い!新たな宇宙を10世代もすぎれば開拓に行けるでしょう!我々は同化します!まさにしています!共に歩きましょう!進みましょう!WAR IS OVER!」
「「「WAR IS OVER!」」」
今まさに日本では町ごと人が吹き飛んでいるのだがそれはそれ。
併合された国ではそんなどうでもよい国のことなど興味もない、明日の食事のほうが大事なのだから。
「「「「「デスペラード!デスペラード!」」」」」
「ありがとう!ありがとう!改善するまでは少しの時間がかかります!皆様!お待ち下さい!助け合ってください!」
演説を終えとっとと母船に戻るデスペラード。
「ああ、お疲れ様です。デスペラード議員」
「お疲れ様です。シャトーヴィジュム議員」
「遊説ばかりで疲れますね、でも食糧事情の改善は課題ですから、このアンバランスさの解消をしない限りは地球の統治は難しいでしょう」
「まったく、どうしてこんなに人口も食糧事情もメチャクチャなのか理解に苦しみます、どうしてこのざまで戦いたかったのか……」
「さぁ?愚物な権力者の考えることはわからないですね、ところでどうして私の遊説先ってワインの産地ばかりなんでしょう?」
「ワインっぽい名前だからだそうだ、私が治安悪い場所担当なのはなぜだ?」
「名前の感じらしいですよ?」
「よくわからんな……?次はメキシコだ、君は?」
「フランスですね」
ため息を付きながら遊説に行く議員たち、シーザーこれ一人で回してたって本気かよと思いながら怒りの長期休暇に理解を示しつつ本業と遊説に戻る。
「余は建国以来初めて疲弊しておる、議長がいないだけでこれか?議長権力に仕事投げすぎたか?」
「………………」
「シタッパー?」
「あ、はい、寝てません」
「それはどっちの意味でだ?」
「え、あ、はぁ……」
「もうよい……ああ館山が吹き飛んだ、館山だったか?」
「休んだほうがよろしいのでは?」
「アッサー、あれ?アッサーは出撃してないのか?」
「私は欧州で遊説してますからね……ただの平押しに指揮官は不要です、ナポレーンくらいでしょう忙しいのは」
「あああああ!巨大化した!今回はしないこと前提の作戦だったのに!くそおお!第1123師団撤退!第238師団!範囲内だ追撃せずいひけ引け!あああああああ!クソダサロボが来た!耐えろ耐えろ耐えろ!第38師団そこでは巻き込まれる、撤退しろ!コンドル怪人ハゲワシン!耐えろ!後5分でいいから耐えてくれ!かわせ!そんなへなちょこパンチ!バカ当たるな!もう海にいけ!南下しろ!今館山が吹き飛ぶと戦略的に…………あっ!あぁ……」
「戦後を見据えて活動してるとはいえやることは同じですからね、怪人を送り込み低確率で爆発することに賭け、街ごと吹き飛ばして兵糧攻め、ひどい戦法ですね」
「この前しいたけの工場に行ったぞ、昔は丸太に傷をつけて生えてくることを祈ったそうだ、同じだな」
「さすがにシュタインの研究をしいたけと同じようにするのはどうかと」
「なんとか巨大化してくれ!なんとか巨大化してくれ!」
「うう……髪の毛食べたらお腹痛い……」
「強くなれ!強くなれ!」
「さすがにわかりません」
「なんとかなれ!なんとかなれ!」
「博士、遊説から帰ってきた議員に神頼みはやめてください」
「まぁ山手線内さえ守りきればなんとかなるでしょう、横浜は防御が厚いですね、今まで怪人の巨大化も成功してませんし。正直吹きとばすのは反対です」
「それはなぜ?」
「中華街があるので」
「それが?」
「料理が美味しかったので残しておきましょう、議員の接待に使えます」
「あのなぁ……その程度で……」
「議員の疲労が限界に来ています、人数を受け入れる我々からして珍しく美味しい食事場所があるので?北海道で焼き肉でもいいですが?食べますよ、議員は、我々も、供給が減りますよ?いいんですか?それくらいのねぎらいがなければ暴発しますよ、デスペラードがさっき愚痴ってましたよ?いいんですか?」
「デスペラードが?決起した際に文句一つ言わずに頑張っていたあのデスペラードが?」
「あの人顔が怖いから元々人前に立ちたくないんですから……」
「じゃあ休暇やるか?」
「陛下が働いてくださるなら」
「キャパオーバー」
「じゃあ横浜のお店で接待でもしてあげればいいでしょ」
「それでいいわ……」
デスペラードは満足していた、何だかわからないがメキシコの遊説中に何度か襲われ腹立紛れに帰還したら横浜のお店でご飯食べてきていいよと皇帝陛下が言うのだ。
はっきりいえばうまいものは大好きである、カビたパンやしなびた果物を食う生活が長かったのもあり地球で遊説するようになってからうまいものを食うことをモチベにして世界を回っていた。
なんてうまいんだ、皮しか食わない北京ダックってなんだよと思ったがなるほどなかなか奥深い。中華料理か……そういえば遊説リストにあったな……。
なんだか楽しくなってきたな、シーザ!まだ帰ってこなくていいぞ!もうちょっとだけ遊説を楽しみたい。
「あの人ヤクザ?」
「しっ!聞こえますよ!」
「たしかにニヤニヤして今から人殺すか女売りに行きそうやけども」
「悪人かもね……まぁ私達には関係ないよ」
「私達が売られるかもよ~」
ひと仕事を終えてそのまま中華街で少ない小遣いで肉まんをかじりながら極悪人顔のデスペラードを眺める5人。
当の本人はご機嫌で、周りが怯えて道を開いていくのに気がついていない。
「横浜吹き飛んだらどうする?」
「困る、最前線ですぐめし食えるのここ以外そうないで、なんとか守り抜かないと飯食ってる間に街が占領されるで」
「食べずに出撃する気はないですからね」
「前がおかしかったんだよ……」
「頑張ってる割にお金もらえるわけじゃないから生活が厳しいわ~」
「只今戻りました、横浜攻略は帝国兵でやるべきで吹きとばすべきではありません」
「……気に入ったのか?」
「はい!元老院議員として慰安用の食事場所に認定したいので決議を出す予定です!」
「それ怪人を送ったら?」
「陛下に抗議します!」
「そうか……デスペラードを持ってしていい店だったか。よきにはからえ……」
「ありがとうございます!では失礼します!」
スキップでもしそうな勢いで議会に向かうデスペラードを見て、皇帝は真面目にやる気あったの幹部だけだったのか?とすごく不安になった。
数日後シタッパーと中華以外で食い倒れ旅をした結果戦場にすることを避けるように通達を出した。
「吹き飛ばしたらバルサク宇宙帝国にとっての損失が大きい」
「まったくそのとおり!さすが陛下!」
「賛成」
「まぁ……卿等が言うならいいが……」
「えぇ……平押しで街を無傷で横浜を落とす……?」
ナポレーンは泣いた。
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