第49話

「動きはなしか?」

「シタッパー、あんな不思議ロボが1月でどうにかなるか?」

「毎週壊れても翌週で修理されてるのはドラマの中だけだよ?代わりに治してくれるのか?」

「動くときはどうせ派手にやる、いまから政治工作でもしてるかといわれたらありえないな。どこに働きかけるんだ?スペインか?カナダか?インド自治区か?ほうっておけ、軍事面を抑えておけば問題はない」

「特に騎士団からなにかあるわけではない、気にしなくていいだろう」

「何かあれば余かシーザ、ナポレーンに連絡が来るだろう」


 シタッパーの素朴な疑問は食い倒れ旅観光中の全員からどうでもいいという反応を返された。


「政治面は考えなくてもいいのだ、連中が騒動を起こしてからでいい。宇都宮周辺だけは固めてある。外敵にはバルサクの出張所があると思われるからまっ先に襲撃されるだろうし、別方面で事が起これば宇都宮から軍を動かせばいい」

「怪人集団は京都で観光中だ、多少の揉め事はあるが……。まぁ、いいだろう」

「元老議員は世界各地で宣撫中ですよ、なかなか忙しいですけど……ウジ虫のチーズが意外と美味だとか言ってたなぁ……。意外と軍を動かすことがなくて退屈ですね、久々に私が出ると思ったんですけど」

「科学技術はいまいちだがやはり発想だな、色々見てるが面白い。ほら、これなんて同じ媒体なのに日本だけロボに乗るんだぞ?」

「この国の女騎士はなぜ農作業したりゴブリンに負けるんだ?」

「それは聞かないでくれ」


 アッサーの質問だけ明確な拒否回答をしたシタッパーは吹き込んだやつ絶対許さんぞと思いながらクレープをつまむ。


「余としてはとっとと終わらせたいが、連中は動かざるを得ないだろう。そのうち物資も尽き果て乾坤一擲の大勝負を仕掛けてくるはずだ。コンビナート襲撃など大規模な事件が起こっていない、そうだな?シーザ」

「はい、海外では一部ありましたが小規模で逮捕済み、無関係です。そろそろ略奪品も尽きるかと思いましたが、節約上手ですね」

「存外撹乱で普通に購入してるかもしれないな、もっともあのロボがなんで出来てるかまではしらないがな」

「亡命した時の船解体して作ったんじゃないか?硬いぞ?怪人大きさと質量を考えても凹んですらいないんだから、そうだな……やはり船だと思う、個人亡命に使った船なら大きさ的にあんなものだろう」

「ああ、なるほどな……。そこまで肩入りするほどか?」

「恋人でも出来たんじゃないか?」

「あいつ妻がいただろ」

「なんかそんなロボット物なかったか?」

「あれとは微妙に状況が違うけど……。そういえばそれは実写でやってるらしいぞ、旧フィリピンだかで」

「よく考えたらエデソンに継承権はないしな、あったら押し付けてってもよかったが」

「へぇ……」

「今年の戦隊モノは普通にやるらしいですね、ただセット多めだそうで」

「平和になったしロケも増えるだろ」

「今年何やるんですかね?」

「さぁね」


 他愛もない会話をしながら歩く6人の姿は、それぞれがなんの肩書もない頃と同じだった。






「待機かぁ……」


 赤井紅子は退屈そうに部屋のベッドで横になりながら呟いた。

 待機を通達されてから1ヶ月ほど、街で遊んで買い物をしてテレビを見る。そんな平穏な日々を過ごしている。

 ほかとの違いは学校に行ってないことくらいだろうか?

 宇都宮周辺に厳戒態勢が敷かれているのであまり宇都宮以外に出たくはない、身分証明という名の学生証は宇都宮とは無縁であり、聞かれれば聞かれるほど墓穴を掘るだろうからとエデソン博士から伝えられ喜んだのもつかの間。

 宇都宮ですることはなくなってしまった。しかも平日から遊んでいると警察がやって来る、補導された後はどうしょうもない。かつては地球防衛軍所属を盾にして押し切ることも出来たが現在では不可能だった。


「暇だね……」


 よくあるドラマの再放送を見ながら、有料衛星放送で映画でも見て夕方からどこかにでもいこうかと思うとコンコンと遠慮がちなノックが聞こえた。


「どうぞ」

「あ、あの……紅子ちゃん?」

「金恵ちゃん?どうかした?」


 黄田金恵の訪問に少しだけ驚きながら用件を尋ねる紅子。

 どうも最近の金恵は様子が変な気がすると思いつつも、そういえば昔はこんな感じだったかと思い直す。


「夜はどうするかって……山葵ちゃんたちが……」

「バーガーでいいんじゃない?届けてくれるよ?」

「た、たまには自作のたこ焼きが食べたいって……タコパしたいっていってるから……」

「へー、そういえば今年はやってないなぁ……。うん、そうしようか」

「碧ちゃんはどこ……?」

「さっき本を買いにいったよ、メールしとくね」

「う、うん……ありがとう紅子ちゃん……。山葵ちゃんに伝えてくるね」


 金恵ちゃんやっぱりストレスたまってたのかなぁ?

 あの次期は何かやさぐれてたし、やっぱり程よい休息がないと人下ってダメなんだな。

 帰ったらパパとママを少しは休ませてあげようと思った紅子は入れたい具材を注文しようと思いながら宅配の注文を押した。

 多分闇タコをするでしょうし、変なものは持参でしょ。


 今月分の生活費としておいて置かれた札束のピラミッドは彼女たちに豪遊しようと言うよりはこれ尽きたら終わりじゃないかと疑心暗鬼を招きながらも多少の息抜きは出来ていた。






「なんだっけ?」

「計画の実行だ!決戦をするんだろう!」

「…………?」

「あの娘たちは持たないんだろう!」

「あっ、ああ、そうだ!なんでこんな大事なことを忘れてたんだ?平穏な世の中を生きようとするので精一杯だったな」

「選ぶのなら別にこれでもいいが、あの娘たちは……」

「もちろん事を起こすよ!確か完成してたはずなのに……うーん……?最近良く忘れるんだよね」

「年か?」

「かもね、いや宇宙基準では僕も若者なんだけど、いやギリ中年かも……。いや若者だ!」

「年取ると自分は若者だと思うものだ」

「経験則?」

「そうだな……」

「そういえば、僕より年上の人ってそこまで多くないからね。あんまり大人になった気がしないよ」

「そんなものか?たしかに社会に出れば年上しかいないものな」

「僕は元々敗戦国でバルサクに下ったからね、最年長だったんじゃないかな?まぁ元同国でも顔も知らないから対して把握してないけどさ」

「そんなことをいってたな」

「だからこそ、平和が一番だと思うよ。祖国はバルサクに喧嘩を売って負けただけ、売らなければあるいは残ったかもしれないし、経済的に併合されたかもしれない。でもバルサクってああいう国だったからさ、無駄だったんじゃないかなっていまでも思うよ。併合されたほうが平和だったかもね」


 話しながらも書類にサインをし続けるエデソンはさて、そろそろだなと呟いてペンを置いた。


「ある程度は終わったね、朝食にしよう。食べてないだろう?」

「ああ、そうだな……。ステーキがいいな」

「そりゃまた素敵だね」

「それじゃあ素敵なステーキを食べに行くとしよう」


 こんな事をいうから年を取ったんじゃないか?と思いながら鉄壁は豪勢な朝食を共犯者と取ることに決めた。

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