第11話
「新地球防衛軍って!どうなるんですか!」
「入った覚えはないです」
「ウチも知らん、どうするん?」
「対話するの~?今更~?」
「ど、どうなってるんですか?」
新地球防衛軍設立からてんやわんやで、ようやくピュアハーツの見舞いに行くが5人から詰められる新地球防衛軍長官になった鉄壁泰造。
さっそくピュアハーツに新地球防衛軍所属を通達しにいった。
「しかしね、君たちは地球防衛軍の……」
「博士と政府に協力したけど地球防衛軍に協力したわけじゃない!」
「事後報告で有耶無耶にするのは良くないことです」
「そもそも本来の地球防衛軍にも所属してないのにどうして所属したことになるん?」
「あ、あんなことしてくる相手に肉弾戦なんて無理ですよ!」
「あんな砲撃じゃ無理~」
流石に新地球防衛軍は無茶だという自覚はあったがここまで拒否されるのも腹立たしく、日本の未来を何だと思っていると言おうと思ったが眼の前にいるのはそもそも日本の未来を二重の意味で背負う人材である。
強く出れない鉄壁はなんとか納得させようとする。これは決定だったからこそ。
「そもそも地球防衛軍に所属した事実はないし」
「命令されるいわれもないですし」
「元は協力要請やし、命までかけるのは違うやろ!」
「砲弾相手に命までかけるのは……」
「お断りよ~そんなの……」
正論である。鉄壁は元から地球防衛軍に所属していると思ってるのでごねていると思っているが、ロッキー山脈を消し飛ばした砲撃をなんとかしろとか言われても自分も抗命するだろう。
抗命違反を咎めたところで表に出たらこっちが悪者だ。と冷静さを取り戻す鉄壁。もっとも抗命以前の問題であったのだが。
「とにかくピュアハーツは引き続き地球防衛軍として防衛を……」
「だから所属してないんだって!」
「そもそも対話の求めが向こうから来てるやん!何やってるんや政府は!税金ドロボー!」
「防衛といっても何をするの~今更~?」
会話の堂々巡りである、もっとも鉄壁長官が一応書類を探そうとでもすれば所属してない事実と含めてもっと頭を悩ませることがあっただろうが。
彼はそんなことをしないからこそこうなっている。
「我が帝国はモスクワを攻略した!欧州攻略作戦を開始する!」
バルサク宇宙帝国の臨時放送で対応を考えなくてはいけなくなった鉄壁は説得という名の強要をやめ本部に戻ることになった。
「一体どうなっている!」
「放送の通り、モスクワ陥落、多方面で攻撃が開始された。大西洋に全域に海兵隊が上陸。英国に敵軍空挺降下中。どうしますか?」
「どうもできん、一番近い国は何処だ?欧州だろう」
「トルコ戦線突破、シチリア陥落、マルセイユ、モンペリエ陥落、フランスの降伏が拒絶、スペインが帝国側に参加、フランス攻撃。カナダも正式にイギリス攻撃に参加」
「そうなったか……ここでか……」
「欧州はもう落ちたも同然である、新地球防衛軍は未だに交渉をしていない。帝国と引き続き矛を交えることに相違ないのか?返答を求む」
全世界同時中継による帝国からの最後通牒に鉄壁は頭を悩ませた。どうすればいいのか……?
「そのまま講和案を送り給え、日本全土の返還、それをたたき台にすれば助かる」
「エデソン博士……」
「送るだけ送り給え、それで打つ手を考えろ。ロボはもう少しで完成する、してからならまだ……反動が大きいがパワーアップ装置も……だから早く講和に動けといったんだよ、組織なぞ形だけでそちらを優先しろと」
博士の言葉が無情にも響く、早期講和提案をして蹴られればその間の期間を利用して開発を終わらせ、再侵攻を数度撃退。自分と不仲であったシュタインを今回の犠牲の原因として失脚させ、そこで人類側の継戦能力が終了。バレる前に講和が彼のプランだった。鉄壁は腹をくくり交渉の席に向かうこととなった。彼の意図を取り違えた鉄壁長官はこの後失策をすることになる。
「以上が地球防衛軍の提案である」
「それが、地球防衛軍の?日本防衛軍ではなく地球防衛軍ですよね?」
「日本全土の返還を持って講和、これは譲れない」
「……占領国は?」
「新地球防衛軍の管轄外である、口は出せない」
「……講話後は?」
「スペインやカナダのような付き合いを望む」
「…………話になりません」
帝国側は現状の講和なら受け入れられた。仮に返還を求めるのなら日本と関係が深い国の独立も提案して場合によっては日本に組み込むことも匂わせて交渉するべきだった。占領国を見捨て、早期に下った友邦と同じ扱いをしろとはとてもではないが国民が納得しないだろう。キホテ団長を討ち取ったとはいえそれだけである。欧州が落ちれば全力が日本に向く。なぜこのような強気な交渉をしているのかシーザには理解ができなかった。幹部たちが警戒しても流石に全力であれば勝ち切ると思っていたのだから仕方がない。
鉄壁は理解できていなかった。エデソンの言葉は自分の発明が完成するまで、一定の軍事力を持つまで引き延ばせということだと判断した。
彼は本心から勝てないとは思っていたが攻めると面倒な国だから講話するだろうと思っていた。ピュアハーツを過信していた。ニチアサで得た知識による敵側の警戒を軽視した。交渉のたたき台の日本全土の返還は現状維持の講和を勝ち取るためのたたき台であって邦人の多い地域も返還を求めるくらいでっち上げて引っ掻き回すと思っていた。
だが悲しいことに彼は軍人であった。交渉も予算関係が大多数でこのような交渉経験はなかった。帝国からはピュアハーツを背景に強気な講和を提案して、対話を求める姿勢を出しながら真っ先に組織の再編とエデソンと軍備増強を図る旧地球防衛軍の残党としか判断できなかった。ピュアハーツがいなかったのも印象が悪く、功績を横取りしようとしてるとも思えたのだ。
なにせ帝国側はこの話し合いにピュアハーツを呼びたいと伝えていた。だが彼は呼べないの一点張りである。地球防衛軍所属ではないし世界の危機と言って向こうが呼んでるからとそんな会議につれていくのはおかしい、殺されるかもしれないと言われ、後者に関しては鉄壁は否定ができなかった。
「誠意のない回答は地球共通のようだ、新地球防衛軍は交渉の余地も価値もない」
比較的まともな交渉では温和なシーザが自分から席を立ち去っていく珍しい光景を見た元老院議員たちは少し驚きながらあとに続く。
若い議長の頼もしさを感じながら。
こうしてどちらも望まない最終決戦が始まった。
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