第10話
「それで、どうする?諸君らの意見を聞きたい」
「立て直しがあまりにも早すぎる!昨日の今日だぞ!予期してたとしか思えん!あの国は行動が遅い国のはずだろう!事前の評価はどうした!」
開始当日にいきなり計算が狂ってしまった。すでに中東方面軍は進出をしておりシベリア攻撃も開始されている。アッサーは中国海岸線を抑え日本に対して圧力をかけたうえで内部主要都市を占領、海岸部の海兵隊を再編し日本海側全土に強襲上陸。シベリア方面軍は進撃次第では北海道方面に増援を送り東北進撃。
と言う計画だったである。つまり日本を攻撃するべきかどうかでアッサー騎士団の動きは全部変わってしまうのである。
そもそも日本政府が動けないと舐めてかかった作戦であったことは否めないのだがシュタインが強硬に直ちに終わらせるべきと強くでた面もある。シュタインはニチアサ系のヒーロードラマを予言書だと思っており、それに則ってエデソンが動くと推測しており実際そのとおりになっていた。
シュタインは日本が侵略者と戦う指揮を取れば行動を読まれているから負けると確信を持っており、エデソンは自分が指揮を執ればシュタインを失脚させることができると思っている。
日本が、地球防衛軍が勝つとは欠片も思っていない。好きにさせてくれたので講和の道筋を作るくらいのことは考えている。腹をくくり、日本政府にも世界の地球防衛軍にも無断で地球防衛軍総司令部を名乗った鉄壁泰造長官に称賛の拍手をし、心を打たれるくらいにはエデソンは彼を買っていた、
なんならキホテを倒した5人も可愛がっており、自分に優しかった皆が安全に、幸せに、穏やかに過ごせる程度には骨を折る覚悟があった。講話後に自分の身を引き渡たし幹部たちが自分の死刑を訴えても守ってやろうという覚悟は出来ていた。
降伏で渡されるのはいやだが、講和で友人を助けるために身を捧げるくらいならかまわんと長い人生と戦争経験で開き直っていた。
もっとも、その理由でやってきたのなら同じような戦争経験を味わった幹部たちは要求を受け入れるしなんなら死刑にはしないだろう。シュタインですら理解は示す。むしろ謝罪するかもしれない。
だが、今あるのは日本攻略作戦を中断するべきと言う空気であり、予期していたのだという諦めであり、最後は日本にするしかないという諦めだった。
奇しくもエデソンとシュタインたちは同じ結論に達しており、大抵は日本が最後の攻略目標の時点で話が始まっていると思いこんでいる。他の国は同じようなヒーローがいないから負けてるだろうと。
「もう巨大ロボは出来ていると思うか?」
「この速さだ、準備ができているだろう……私なら作れるまで待たせる」
「誰か巨大化できるものは?」
「「「「できません」」」」
「陛下は?」
「できん」
そんな都合よく巨大化できる人材もおらず、装置も出来ずどうするべきかと頭を悩ませた。
「いっそ巨大化しなければいいのではないか?ロボを出せないだろう?」
「ロボで我々の艦隊……えー宇宙艦隊を攻撃するのでは?」
「なら勝てるだろう、シタッパー?」
「さすがにエデソン博士も旗艦を撃沈させるような兵器はできないと思いますが」
でもお約束だとなんかすごいパワーで旗艦を臣民ごとズバーっと殺したりするんだよなぁ……とシタッパーは思っているが現状がお通夜なのでとてもいえない。嫌な未来想像で不安に倒れそうなシュタインの手を握って励ましつつシタッパーは提案を出した。
「とりあえず……国連管轄外にないし対外交渉をするのなら静観宣言を出せばいいのではないですか?」
「それもそうか……シーザにやってもらおうか」
不毛に終わった会議。ただただ静観を決めただけの会議。帝国の幹部たちはため息だけを吐いて任地の指揮を執る。
「我々バルサク宇宙帝国軍は欧州攻略にあたりアジア方面の制圧に入る。新地球防衛軍が対話を尊び国連と無関係であることは喜ばしいことである。そして戦闘前のインドの降伏を歓迎する。新たな臣民よ、ようこそ!」
抗戦派の基地を破壊するための合図である演説をしてシーザは席についた。
「議長、日本攻略作戦は中止したというのは?」
「ピュアハーツには万全で挑む必要があるとの幹部陣の会議の結果だ、軍事的な問題である。陛下の御裁可のもと行われたものなので問題はない」
「議長はどのような主張を!」
「先程言ったように軍務であるのでほぼ専門外だ、外交面が必要なら会議で口を出す」
「日本との外交交渉はどうなっていますか!」
「インドに関しても首相としてお話を!」
「日本との外交交渉はない、新地球防衛軍ともない!インドの抗戦派は制圧する、他になにか?」
「アフリカ、オーストラリア砂漠地帯のテラフォーミングに関して」
「現地人に対して非礼な発言を行うな!今まで滅ぼしてきた国のような言動は慎め!植民化だ!我々は移民である!」
「失礼しました、謝罪します」
「アメリカ大陸の治安に関してですが」
「まだ我々の統治下にない、南アメリカはなんとかなっているメキシコ以北は不明、カナダ友邦である。統治に問題はない」
最高幹部の一人ではあるがやってることは完全な中間管理職でありシーザは今日も議会で働き続ける。実際は問題山積みだが帝国臣民に中継されているので問題はないと言い張っている。
南アメリカ?いまだに兵が動かせんくらい戦ってるわ!
「議長、インド抗戦派の鎮圧が終わりました、定例の地球への全世界中継演説をお願いします」
「わかった、3,2,1……」
「新しき臣民の諸君!君たちの降伏後も迷惑を顧みず暴れていた連中はこの通りだ。旧インドのじゃじゃ馬は綺麗サッパリ掃除された!……中国沿岸部の制圧は終了した!極東ロシア方面は主要部を制圧。今まさに、シベリアに進出している最中だ!」
実際は主要都市落としたり鉱山抑えただけなんだろうけどな、極東ロシアで押さえるべき場所は軍事的にはそうないし……面倒だから何もない土地なんて主砲ぶっ放せばいいのなーと内心ぼやくシーザ。まぁ植民可能の土地は多く取って置くに越したことはないし手間はかかるが仕方はないなーと演説内容をひねり出す。
「戦争の終わりは近いだろう!我々の勝利によって!君たちの始めた戦争だ、君たち指導者や政府の命を持って終わらせろ!新たな臣民たちよ!繁栄を享受しようではないか!帝国万歳!」
「「「「「「万歳!」」」」」」
とりあえず終わらせる時は帝国万歳で終わらせるのはシーザの悪い癖である。
幹部陣も終わりに困るとこれを真似てやたらと多用する幻の言葉である、さながら戦隊モノの決めポーズだ。
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