第9話

「さて、アメリカ合衆国はこうして滅んだわけだがな、欧州攻略の準備はどうか」

「宣撫工作後に大西洋強襲、英国、フランス、デンマーク、ドイツ、ノルウェー、ロシアの上陸を予定しています。初戦は海兵隊なのでシタッパー提督にお任せします」

「アフリカ方面は中東に進出、と言っても大半は抑えてあるのですが……アジア方面からトルコ・ロシア国境まで進出し停止。アジア方面はインド周辺で停止。防備が脆弱ならインドを打通します。これに関してはナポレーン元帥と指揮を交代したいのですが……強襲上陸後に交代するのはどうも隙を突かれそうなので……リザード軍集団におまかせして穴埋めに海兵隊を使います」

「我々騎士団は東南アジアからインド、中国攻撃をします。台湾方面から朝鮮半島強襲も視野に入れていますが……できれば中国インドに傾注したい」


 ほぼ勝確だな。ニチアサヒーローが国外に出張れでないのなら脅威はないことを証明してくれている。まったく助かったわ!あやうく海兵隊で先陣掴まされてシタッパーは我らの中で最弱とかなるとこだった……さすがにそこまで薄情なやつはいないが。実際提督の俺が万全の力で戦えないのは事実だ、この陸軍将軍が空戦も海戦も強いなんてことそうそうあるわけ無いだろ。元は皆軍艦船員だからな、なおさらだ。技術力と装備と種族差で上回っているに過ぎん。陸軍と演習したらアメリカ合衆国より早く負けるだろうさ。アメリカ自体を使って演習するならアメリカ合衆国より持つだろうが。


「会議中失礼いたします、皇帝陛下。及び軍部の皆様方」

「シーザ、どうかしたのか?」

「インド政府が降伏の申込みをしてきました。フランスが秘密裏に降伏交渉、ドイツも同じく、ロシアもです」

「どう申し込んできたのだ?」

「カナダ、スペイン大使館ですね」

「筒抜けだな、まぁわかりやすくはしておいたがな」

「それで、政務を司るシーザ議長、首相として尋ねたほうが良いか?どうする?」

「インドはよろしいかと、ただ率先して降伏した国を友邦国として認めた後で同じ扱いをすることには反対です。そのうえヒマラヤ山脈を占領している後では滅んでいないだけマシでしょう」

「帝国首相としては?」

「せいぜい知事程度の権限を与えて首都数州だけ任せた方が良いかと」

「認める、他の国は?」

「フランスに関してはカナダへの打診です、なおスペインがフランスの降伏だけは認めないで欲しい、この戦争の利益は不要とのこと。ドイツも同じく自国の降伏を認めてくれれば他国を纏める、ロシアも同じようなことです、認めてくれればEUを指導して纏めると」

「取らぬ狸のなんとやらというやつだな?」

「皮算用です。友邦の意見は大事ですね、流石に利益は与える必要はありますが。ドイツは論外ですね、自国以外を売り払うことを計算しています。カナダに交渉を持ってきてるのもマイナスですね、スペインに堂々と持ってくるほどなら使いようはありましたが。ロシアも同じくスペインに持ってはきましたが……そもそもEUではないとのことです」

「舐められてとるなぁ……」


 形振構わないだけじゃないかな?アメリカ合衆国はこの世界でも大国だったんだな。再度計画を立て直しだな。シュタイン博士は遅れてるし結構やることが多くなるな


「すまんな、遅れた。ピュアハーツに関してのことなんだが……これを見て欲しい」

「かまわんよ、シーザも見ていけ」

「はっ!」


 そういって広げたのは……うわぁニチアサの戦隊モノのDVDだ……アニメもあるな……どうしてこれを。


「これは日本で流れてていたテレビ番組だ、我々で言う娯楽放送だな」

「タイツ?とヘルメット……一部はピュアハーツっぽいところはあるな?こちらは?」

「魔法少女らしい、変身して戦うアニメらしい」

「こっちのフリフリしてるほうがピュアハーツっぽいな……これは?」

「これは毎年放送されている戦隊モノというやつらしい。内容は地球を征服しに来た侵略者をこの5人、3人、6人……年によって違うが撃退する番組だ」

「なんだそれは!予言ではないか!」

「そんな物があってここまで負けたのか?何を考えているんだ!?」

「技術力は敵組織は我々に劣る組織も上回る組織もいる、兵力ですら上回る奴らがいたぞ!しかもこれは日本で作られたものだ!アメリカにも輸出しいたらしい!」

「「「「なんだと!」」」」


 話の都合だよ、と言ってもなぁ……侵略者側だと毎年そんなことを想定した番組作ってるの怖いわな。


「しかも宇宙の警備隊が地球防衛で戦うものやバイクに乗ったライダーとかいうのもいるらしい、合計4種類あるぞ!シリーズだ!」

「それだけあるのだからパターンも読まれているか……」

「負けるべくして負けたか、技術で押してるに過ぎんか……だがなぜ日本はここまで押されたのだ?首都だけ守りきったのか?」

「カナダ、スペインが言うには地球防衛軍はアメリカの組織だったらしい、この戦隊モノは国際組織のようなものだが司令官がだいたい日本人だ、トップも日本人だ。つまり日本が指導力を発揮できていたらまずかった可能性がある」


 いや、日本が部隊なのにやたらアメリカやら英国やらエジプトやら出しても困るだろうし……。まぁ昔のやつだとたまに海外出張で事件とかあるけど……初代のバイク載ったやつなんて欧州とかに行って2号と交代したはずだけど……たしかに魔法少女は海外とかでてきても困るから?


「つまり、この変身モノは……事前の模範教本だったというわけか」

「いや、全部が全部では……それに偶然かも……」

「世の中は必然のほうが多いかと」

「シタッパー、君が言ったのではないかエデソンは日本にいるのではないかと。これが答えだ。これを元としてピュアハーツを作り上げた違うかね?」

「いや、私もそう思う。その設定だけだとそう考えてもおかしくない」

「でも巨大化とロボは……」

「ほう!私はまだ説明してないが……何故知ってるのかね?ハワイ攻略前に巨大化出来ないか聞いてきたねぇ……しかも追い詰められたらとか……これを見た時びっくりしたよ……キミは何を知っているんだい?シタッパー」


 本来なら裏切りを疑われるような場面だが皇帝陛下を含めて俺を見る目は不審ではなく心配だ、どう切り抜けるんだこれは……どうする?


「ハワイ前に……ピュアハーツ勝利前に……この話を知っていたとして……信用しただろうか?」

「まぁ、確かに……実際巨大化案に関しては速攻で却下したしな、見た上でも我々が無慈悲な侵略者と印象付けるから反対しただろうが……」

「私も口を出せるなら反対したでしょう、巨大化自体はできるかもしれんが同化政策に差し障る」

「騎士団としても巨大化は反対だ、空挺降下装置が使えんから平押ししかできなくなる、それなら存在意義がない。高速機動と痛撃の打撃力、同時編成で離れた100の大都市を落とせるほどの能力を持つ騎士団が平押しでは帝国軍と同化した方が良い」

「帝国軍としては賛成ではあるが……宣撫工作は絶対に失敗しただろうな、巨大化は具体的にはどれくらいなんだ?」

「地球の情報サイトを見たら50m~100mだそうだ」

「絶滅戦争するしかなくなるではないか!友邦国との関係も崩れるじゃないの!なんでそんなに巨大化できるのよ!」

「落ち着け!ナポレーン!たいてい世界征服とか闇の世界にするとか地球を食うとか宣撫しなくてもいいらしい」

「ただの侵略で……!!何しに来たのよ!」

「侵略だ、自分が住みやすくするために」

「じゃあ余等と変わらんの、移民にきたり植民に来ただけだ、全員が移民できれば植民地ではなく国家にできるが……ここに骨を埋めるか増える人口を考え宇宙の土地をまた探しに行くか……」

「まずは地球が先ですよ、陛下」

「ああ、そうだな……我々が住みやすい環境でよかったな原生住民を殺して住み替える必要があったら……どうしただろうな」

「我々は虐殺者にはなりたくはないですね、仕掛ける側はごめんです!結果的にすることになっても自分からそれをしに行くようでは……団長は退任します」

「帝国軍は臣民を守る盾であり槍である、まぁ今は槍でも盾でもないですが……科学の進歩ですね、新しく臣民になる相手を殺し回るのは御免被ります、辞表を出しますよ」

「我々も住める場所を探しに来たわけで……極論滅ぼすなら主砲でも撃てば良い。だが敵対してない相手ごと対話もなしにやれと言われたら……辞任いたします」

「元老院も全員反対するでしょう、自衛戦争の結果でそうなったことはたしかにありますが……その場合は私も職務返上して退任します」

「私はそもそもそれをできる地位にないが一人の科学者としては反対する、本当なら誰も殺したくはないのは共通だろう」


 そりゃ伊達に宇宙を彷徨ってるわけではないからな、荒廃した星で数百年、数千年、とうとう惑星の命が尽き彷徨って100年、たった100年程度だがずいぶん人は減った、宇宙では戦争ばかり、同じ船団国家なぞ勝っても利益もないし一度倒しても復讐してくるばかり。惑星国家も惑星ごと自爆をしかけてきたり。最後の最後に完全に汚染しきって逃げたり。同化してくれる国家も最後まで殺し合う国家もいた。年はとっても戦争に快楽を感じたことなぞ一度もない……本当にね。


「終われば我々が防衛側か……」

「終わればですね……」

「終わらせましょう……」

「終わらせよう……」

「これを最後にしよう……」


 100年、短いが長かった。あれだけ死んでも今でも覚えてるような奴らもいる。それが終わるのだ。俺達はこれを最後の侵略戦争にしたい。


「戦略を転換する。インドは降伏した。新たな臣民に同等の権利を」

「帝国元老院は必ずや実行します」

「インドは指定区域の占領統治、インド旧政府の顔を立てるよう。攻撃された場合は反撃してもいいのだろうな?」

「主戦派ごと潰してくれて構わないとのことです」

「ケツぐらい拭いてほしいものだがな……」

「アッサー!うら若き乙女だろう!」

「すまん……」


 口挟めなくなるから辞めて欲しい。乗れないし、いじれないんだよ!


「では中東方面、アジア完全制圧、ロシアへの攻撃に切り替え、欧州攻略を延期するとしよう。インドを落とす手間が省けたから一旦トルコから圧力をかける。ロシア東を攻撃してEUに再編できるかわからん地球防衛軍がどれだけロシアを助けるか高みの見物でもしようか……」

「作戦決行は来月辺りにしましょうか?」

「いや、明日インドを抑えておきたい、海兵隊の移動はしてないんだろう?」

「大西洋強襲のための移動はまだです。中国に回します」

「よし、欧州計画のみ凍結、アジアを押さえロシアを攻撃して様子を見ろ!」

「ロシアも連邦制度ですから崩壊するかもしれません」

「かまわん、降伏するとしたら遅すぎる、構成国から降伏交渉はないのだろう?」

「ありません」

「なら構わん、どちらにせよ国連主要国は討たねばならん。アメリカ以外は受け入れるつもりはあったんだがな……」

「日本はどうしますか?」

「騎士団と海兵隊の中国攻略後再度攻撃を開始する、今度は全力でだ!地球防衛軍総司令部が消えた後立て直す隙を与えるな!」


 翌日日本は地球防衛軍総司令部として再編したことを宣言し日本攻撃計画は一旦延期となった。国連の管轄にないことと対外交渉権を持つことを宣言したため帝国は一旦見守る姿勢に回ることになったのだった。

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